D.A.N. Oneman Tour “4231”@LIQUIDROOM
2017年のベストアクトは4月のShobaleader Oneかなと思っていたのですが、12月末になって塗り替えられました。抜群に素晴らしいワンマンライブでした。
2017/12/22 fri
D.A.N. Oneman Tour “4231”
at LIQUIDROOM
open 18:00 start:19:00
¥3,500
セットリスト
- Tempest
- Zidane
- House
- SSWB
- Ghana
- Shadows
- Time Machine
- Curtain
- Navy
- Chance(新曲)
- Dive
- Native Dancer
EN
- POOL
セットリストは下記SPICEのレポートからお借りしました。
公演の感想
めちゃくちゃよかった。
ワンマンライブのひとつの理想形が現実世界に映し出されたみたいだった。本当に素晴らしかった。
なにがよかったって、とにかく徹底して「一本のライブ」として研ぎ澄まされた構造、それが美しかった。曲順、曲間の繋ぎ、音響、照明、そしてもちろんステージ上での演奏!そのどれもが「4231」と冠されたこのライブ全体のデザインの一部で、でもそれだけじゃない、一瞬一瞬が生きもののような躍動感をもって届く力強さもあって。構築美がありつつ瞬間瞬間は野性的、なんてそんなの、ライブとして最高じゃない!
誇張表現だって言われたっていい、その瞬間に鳴っている音の向こう側に、イデアが視えるようなライブだった。本当にすごかったんだよ。
D.A.N.は最近「ジャパニーズ・ミニマル・メロウ」という冠がくっついていて*1、それは彼らの音楽性を端的に表現した言葉だと思うし、そこから想起される都会的でおしゃれな空気感、淡々とした平熱感、それらはすべて彼らの音楽そのものだと思う。でも、それだけでもないと思う。前回のtoe×D.A.N.のときにも感じたけれど、この一年でグッと印象的になったリズム隊のうねるようなグルーヴと吸引力、あれってすごく野性的だ。都会ぶって澄ました顔してるけど(※褒めています)本能に訴えかけるような低音で踊らせてくれる。都会的だけど野性的、現代的だけど魔術的。ひとつひとつの要素を見ると相反するようなものがギュッとまとまっていて、でもカオスじゃない。彼らの最大の魅力は、絶妙なバランス感覚じゃないのかな。絶対に過剰にならない。冷静に自分たちを客観視している。でも、客観視しすぎない。ちゃんとプレイヤーである自分たち、その主観、一人称、は明確に保持され続けている。この日のワンマンは、緻密に作り上げられたひとつの作品であり、同時に情熱的なライブアクトだったんだ、と感じています。
長尺の「Tempest」から始まって「Ghana」までの前半の流れが最高すぎて、最初からクライマックス。静かに始まりつつジワジワと上がっていく「Tempest」、“言葉などいらない 触れ合えたら” の声の熱量に圧倒されました。決してがなったり叫んだりしているわけではない、ファルセットの柔らかな声なのに、全身がビリビリと震えた。最初ステージは暗く照明も茫洋としていたのに、徐々に明るくなっていって目に刺さるほど強くなったことも印象に残っています。
そこから「Zidane」「SSWB」「Ghana」!いきなりキラーチューンをこうも連続で叩きつけてきていいの?と思いつつ、「Zidane」~「SSWB」の繋ぎがかっこよすぎて泣けた。わたしは今までD.A.N.には緑っぽい青というか、水深の深い海面の色、彩度の低い硬そうなのに波打つ青のイメージを持っていたし、これまでの照明もそういった印象が強かったんだけど……この日の照明はパッキリした原色、毒々しいピンクや危険信号みたいなイエローをストロボみたいに使っていて、それが音にもぴったりハマっていて本当にかっこよかった。
「Shadows」~「Navy」までの静かな曲が続くパートは、でも全然、だれたり退屈になったりしない。このセクションで演奏された楽曲たちは、テンポは遅めでわかりやすい起伏が少なめだけれど、これこそが彼らの真骨頂だと感じる部分でもあります。わかりやすく踊れるキラーチューンを排除したこの区画は、だからこそ一曲一曲の個性が明確になって面白かった。緩やかな反復でダイナミズムが作られていく、後半になるにつれて強くうねって周囲を巻き込む渦になっていく。そういった曲が続けて演奏されていくことで、ライブ全体が波や渦のように大きくうねり出して素晴らしかった。とくに、彼らの曲のなかでも別格ですきな「Shodows」「Curtain」「Navy」が演奏されたときは鳥肌が立った。
そして新曲からの「Dive」、最後に「Native Dancer」!
そこまで薄闇のような、夕暮れ時か夜明け前のような茫洋とした柔らかくて暗い、そんな情景だったのに、本編ラストの「Narive Dancer」で一気に視界が光で真っ白になった。まさに “ひかりを集めて 半透明で踊ろう” そのままの光景で、その瞬間だけはリキッドルーム全体が現実から隔絶されたような、完全に切り離されて独立した空間になったような、全身が音楽に飲み込まれた状態になって眩暈がした。なんとなく春樹の「レキシントンの幽霊」を思い浮かべつつ、夢か現実か一瞬わからなくなる、自分が生きているのか死んでいるのかもわからなくなる、その瞬間が間違いなくあったことを認識して怖くなって、でもそれがたまらなく嬉しかった。これ、これが、これを感じたくてライブに通ってるんだよ。
アンコールは「POOL」で楽しく踊って、気持ちよくおしまい!
……本当は全然足りなくって、終演後しばらく友人と「もう一回頭からやってくれないかな」「まだちょっと曲あるし全曲やればいいのでは」「アルバムいつでるの?明日?」「次のワンマンいつ?明日?」という話ばっかりしてたんですけど笑
本当に、なにもかもすべて素晴らしかったです。作りこんでるけど緻密なだけじゃないし、緊張感はあるけど張りつめてはいない。すべてが奇跡みたいに噛み合っている公演でした。もちろんそれは奇跡ではなくて、演者と制作側の尽力あってのことなんだけどね。受け手にとっては夢みたいな夜だった。
滅多に出会えないけど、こういう瞬間に出会えるからライブ通いをやめられないんだよな~としみじみと感じました。今年はアルバム出してくれないかな~と期待しているので、作品を待ちつつ、次のライブのお知らせも楽しみにしています。
*1:最近でもなかった。わたしが認識したのが最近なだけで、『EP』の頃からからみたい。インタビュー読むようになったの最近だからもの知らずです……。