NO MUSIC FIGHTER

音楽の話と音楽じゃない話をしようよ

ラブリーサマーソニック2017@WWW X

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2017/8/25 fri
ラブリーサマーソニック2017
at WWW X
open 17:45 start 18:30
¥3,800

出演アーティスト

  • PELICAN FANCLUB
  • Nyantora
  • ラブリーサマーちゃん

セットリスト

PELICAN FANCLUB
  1. 深呼吸
  2. Night Diver
  3. Luna Lunatic
  4. Chilico
  5. 許されない冗談
  6. Dali
  7. 記憶について
  8. 朝の次へ
ラブリーサマーちゃん
  1. PART-TIME ROBOT
  2. ファミリア
  3. FLY FLY FLY
  4. 海を見に行こう
  5. ルミネセンス
  6. なかなおり
  7. あなたは煙草 わたしはシャボン
  8. High & Dry (radiohead)
  9. 天国にはまだ遠い
EN(ラブリーサマーちゃん)
  1. ALRIGHT(スーパーカー
  2. 青い瞬きの途中で
  3. 僕らなら

曲名がわからないので、セットリストは下記Tweetからお借りしました。

ライブの感想

ナカコーがTwitterでときどき宣伝していたので、その日にNyantoraのライブがあることは知っていて。

なにゆえちゃんづけなのかわいい、と思ったら、主催が「ラブリーサマーちゃん」という方らしく、ああそれでNyantoraちゃんなのねと納得。

この日はちょっと疲れていたので、Nyantora聴いてまったりしよう~と思ってふらりと足を運びました。
「会場はWWW?WWW X?」という感じで、イベントの基本情報も主旨もなにも理解しないまま行ったので、入場時に可愛らしいクッキーをいただいたときはビックリしました。

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かわいい。
主催のラブリーサマーちゃんのお母さまの手作りクッキーらしいです。配っていらっしゃったのもお母さまご本人だったのかな?笑顔の素敵な朗らかな美女でした。
WWW Xのキャパを間違えてたくさん作りすぎてしまったらしく、帰りにも同じものをもう一枚いただけました。帰宅してからたべたら、ホロホロした食感とやさしい甘さでしあわせな気持ちになれました。おいしかった。

中に入ったら、ペリカン最後の一曲のアウトロ。本当に即終わってしまった。
YouTubeで聴いて好きな曲もあったので、生で観てみたいなと思っていたからちょっと残念*1です。

のんびり15分くらい待っていると、次はNyantora
ステージの中央にセットが組まれていて、手元を照らすのはグリーンのライト。後ろからはホワイトとブルーが混ざったような眩しいまっすぐな光が照射されている。

30分程度の短いステージ、でも濃密で、途中で時間感覚をフッと喪失するような空間。
ナカコーはHARDCORE AMBIENCEの白いTシャツを着ていて(これ)、後ろから照射されるブルーのライトにまぎれて、Tシャツの中央に描かれている四角い青がときどき見えなくなる。魔法か手品かで隠されてしまって、まっさらなまっしろなTシャツになっちゃったみたいな錯覚を覚えるけれど、当たり前にそんなことはなくって。光が弱まるとまた青が浮かび上がってきて。消えては浮かび上がる揺らぎみたいな青に、現実が揺らぐような感覚に陥る。視覚も、それから聴覚も。

音、全体的にダンサブルな要素が強めで楽しい。後ろの隅っこでお酒を飲みながら聴いていたのだけれど、体は勝手に動くし、心臓も同じリズムで動いているような気がしてきておかしい。たった30分だったけれど描写は幾度か切り替わって、スペーシーだったりオリエンタルだったり地下帝国感があったり。動いているのは音と光だけなのに、いろんな世界を旅している感じがして、疲れている気持ちをほぐしてもらえたような気がしました。
この場で組み立てられて構築されていく音が、緻密なのに堅苦しくスクエアではなくて、たとえば人間の呼吸みたいに一定だけど揺らぎを許容するような、肉体に沿うようなグルーヴがあって気持ちよかったです。Nyantora、ボーっとしながら聴くのほんとすき。自宅でも最近は、気持ちが強張っているときはほぼNyantoraを流しています。すき。

夢みたいな30分間が終わって、また少し待ったら、主催のラブリーサマーちゃん。

事前に、ググると一番最初に出てくる↑の曲だけ聴いていたので、隙間が多めのやわらかいポップロックをやる人なのかな?という印象を持っていました。初期相対性理論みたいな。
でも実際に聴いてみたら、もちろんそういう側面もあったんだけど、それだけに終始するわけではなくって、いろんな表情を見せてくれたのでびっくりしました。もちろんいい意味で。

1曲目の「PART-TIME ROBOT」はキーの低いミドルテンポの曲で、歌もハスキーでドライでかっこいい。もっとふわっとしたイメージを持っていたから、ギャップにびっくりしつつ引き込まれました。アレンジはシンプルなんだけど、リズム隊がどっしりしていて一打一打が響く感じが気持ちいい。

そうそう、彼女、どんなライブやるのか全然知らないままに行ったら、普通にバンド形式でした。これが通常なのかな?
若いアーティストだと聞いていたのでメンバーも若い人たちなのかなと思ったけど、そうでもなかった(笑)。バンドメンバーは同年代くらいかな。どのくらいの期間やっている人たちなのか全然知らないんだけど、初見でもそのまんま入っていけるような開けたグルーヴがあって、とても居心地がよかったです。

アンコールでやったスーパーカーの「ALRIGHT」のカバー、青くて投げやりでキラキラしていて気持ちよかったし、本編途中にピアノ弾き語りでやった「ルミネセンス」という曲は、“いいな いいな みんな いいな/楽しそうだな いいな” っていうシンプルな歌詞とやわらかい歌声、ちょっと切ないメロディラインが、そのときの自分の心情にザクザク刺さってちょっと泣けた。

ラブリーサマーちゃん、帰宅していろいろ調べてみたら、好きな音楽がかなり被っていて「あーそら好きだわ、当たり前だわ」と思いました。似てるから他と同じようなものとして好きっていう意味じゃなくって、明確なルーツがありつつもそのまま表出させるんじゃない、咀嚼された回答としての音楽だから好きだなって。いろんな楽曲やアーティストに対するリスペクトがキラキラ光っている感じ、きれいだった。「初期理論ぽいなあ」とか「初期スーパーカーぽいなあ」とか「ブリグリぽいなあ」とか思うエッセンスはあるんだけど、そのものじゃない。「ラブリーサマーちゃん」っていうキャラクターがバーンってあって、ちゃんとそこから鳴ってる。だから曲調はけっこう幅があったけど、とっちらかった印象は全然なくって、一本のライブとしてとても楽しかったです。

なにより声がとっても魅力的だった。ハスキーとキュートの狭間みたいな、気怠げで舌足らずな、その歌声!
一発でノックアウトでした。

ノックアウトされたので、帰りに物販で流れるようにCDを買いました。
Radioheadの「High & Dry」のカバーをやっていたので、この日は特別なのかな?と思ったのですが、新しいEPに収録されているんですね(これも気持ちよかったです。原曲と違ってドリームポップっぽい感じ、あまくてやわらかい、メランコリィなアレンジになっていました)。
いちばん気に入った「ルミネセンス」は売られていたCDに入っていなかったので、Amazonで即ポチリ。インターネットは便利。 

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写真は、インスタかツイッターで「#ラブサマソニ」というハッシュタグをつけて投稿するともらえたステッカー。それぞれのロゴが並んでいるだけなんだけど、色味もバランスもよくってかわいくて嬉しかった。自転車に貼ろうかなと思ったけど、雨ですごいことになるから、一枚だけしかないステッカーを貼るのはもったいないのよね……。どこに貼るかはもうちょっと考えてみます。

 

彼女、ライブ中に「もう音楽をやめるかも」みたいなことを言っていて、わたしはそこまでの過程を知らないので「?」となっていたのですが、帰宅してから調べてみたらどうやら制作サイド(ビクター……)とちょっと揉めたりしていたようです。
ここ一ヶ月くらい商業音楽のせいで心が暗黒に包まれていたので、そのことを知って余計に「あー」という気持ちになりました。細かい経緯までは調べていないしわかっていないので、ビクターが悪いんだ!とも言えないんだけど、なんだか暗い気持ちになりました。ビクター嫌いじゃないんだけど、売り方に関してはあんまり信じてないからなあ……。
今後出てくる若い方で、「どんな手段だろうとめちゃくちゃ売れたい」「音楽好きだけじゃなくて老若男女全員に聴いてほしい」みたいな熱いパッションとか、「自分では一切流通や宣伝はしたくない」という意識より、「自由に自分の作品を作って適切な範囲に届けたい」という気持ちの方が強い人は、産業としての音楽に無理して関わる必要はないし、既存のビジネスの枠組みに潰されないでほしいなあと思いました。もちろん、独立して専業でやっていくことは難しいし、金銭を稼ぐことは他の仕事でやりつつ音楽は好きなようにみたいな方法論は輪をかけて難しいのもわかっているんだけどね。才能のある若いミュージシャンが食いものにされてすり減っていくのは、やっぱりいやだよ。

 

なんにしても、最初から最後まですごく楽しいイベントでした。
ラブリーサマーちゃん、音楽を続けるならまたライブに行くし、作品も買うので、少し休んでからだとしても続けてくれるといいなあ。いいライブでした。

*1:この日見れなかったのが残念で、後日違うイベントに行ってじっくり聴いてみたら、そこまで好みではありませんでした。でもベースの人のアクションが派手で観ていて楽しかったし、フロアの人たちもハンドクラップしたりして楽しそうだった。