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NO MUSIC FIGHTER

ライブレポ90% CDレビュー10%

仕立て屋のサーカス - circo de sastre -|2017年横浜公演@ BankART Studio NYK

演劇・ダンス・パフォーマンス ライブレポート

行ってよかったです。物悲しくも美しい、静謐な終わりのような情景でした。

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2017/01/10 tue
仕立て屋のサーカス - circo de sastre -
2017年横浜公演
at BankART Studio NYK 3F 3C Gallery
open 16:00 start 17:00
¥3,500

公演の感想

WWW XでのD.A.N.主催イベント+取手で行われていた「ナカコー+フルカワミキ沼澤尚」と被っていて大いに悩んだのですが、先日観た東京公演が素晴らしかったので、もう一度観たいと思って横浜に足を運びました。

▼2017年1月の東京公演の感想はこっちだよ

nomuzikfighter.hatenablog.com

17:20頃会場に着いたら、開場が押しているとのことで行列が形成されていました。
30分過ぎ頃に開場して、海の見える外階段的なところを経由して会場へ。

会場内では、相変わらずパンやお酒、お菓子に苺、古本に服などが売られていました。
サングリアとスイートポテトを購入。

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おいしかったのにおいしそうに撮れない……('ω')

サングリア、量が少なくてちょっと悲しかったのですが、まろやかながらオレンジの苦みが感じられておいしかったです。スイートポテトは滑らかでしっとりとしたタイプ、口の中で溶けてジュワッと甘味が広がって、こっちもおいしかった~。

一緒に行った友だちは、林檎とチョコレートとクリームチーズ(だったかな?)のパンを買っていました。

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一口わけてもらったら、小麦の香りがしっかりするハードめのパリッとした食感でおいしかったです。クリームチーズとかは生地に練り込んであるんじゃなくって、中にフィリングがたっぷり入っているタイプ。

パンとドリンクは鎌倉の「パラダイスアレイ」、スイーツや苺(次は苺をたべたい)はつくば市の「つくばねファーム」のもの。どっちもおいしいし、見た目も可愛らしくて満足。
下リンクは2017年東京公演の説明ですが、「パラダイスアレイ」「つくばねファーム」両方の説明や写真があるので参考までに。

コンクリート打ちっ放しの壁に囲まれた会場には、天井から無数の白い布が垂れ下がっている。その中央にはさまざまな質感の布が敷き詰められた空間があって、コントラバスやミシンなどが置かれています。

中央のエリアを囲むように、布の上にはグレイのクッションが、さらにその周りには椅子が円を描くように配置されている。
前回観たときは椅子席だったので、今回は間近のクッションの上を選びました。布がふわふわしているので、直接座ってもぜんぜん痛くない。

スイートポテトをたべてサングリアをちょっとずつ舐めながら待っていると、ザーザーと遠くホワイトノイズが聴こえてくる。そちらに視線を向けると、ラジオやトランシーバーをぶら下げて大きなカバンを抱えた曽我さんが歩いてくる。彼が中央のエリアについて、ゆっくりと楽器を並べたり水差しを用意し始めたら、開演。

第1部

今回も途中で30分程度の休憩を挟む、2部制の構成。

曽我さんが楽器を並べたり、ときどき思い出したように音を鳴らしたりしていると、ガンジーさんとスズキさんと渡辺さんも、布でできたステージに歩いてくる。渡辺さんだけ黒い服。

前回は使用している楽器や機材がほとんど見えなかったのですが、今回は最初の方、わりとよく曽我さんの手元が見えました。おもちゃのような鉄琴や笛などを使いつつ、ループさせていくスタイル。
笛はほんと、お祭りで売っているようなちっちゃいやつで、吹くと「ベー」て音が鳴るようなやつ(正式名称がわからないです)。スズキさんが持ってきた(んだったかな?曖昧)銀色の水差しからコップに水を注いで、その水の中に笛の先端を入れて吹いて、ぶくぶくという水音を録ってループさせたりしていました。

明確に「始まるよ」と宣言して始まるのではなく、ゆっくりと幕が開くような、自然な流れで音が徐々に増えていってゆっくりと照明が落ちていって、という導入。いつの間にか迷い込んでいた、という感覚があって、とてもよかった。

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静かに水が満ちるような、幻想的な第1部が終わって、曽我さんから簡単なメンバーやサーカスの説明があってから休憩。

わたしと友だちが喋っていると、スズキさんが「次はここに梯子を置くから、ちょっと見づらくなるかも。でもサーカスの雰囲気を味わえるよ」と教えてくださいました。パフォーマー側の邪魔にならないならなんでもいいよー!楽しみ!と思って待っていたら、ほんとに梯子がやってきました。上の写真のやつ。
黒い革靴のぶら下がった、アンティークな雰囲気の脚立。床は布だらけだし座りが悪いので、中央に置いてあるブロックに脚を布で固縛していました。

この休憩のとき、わたしの目の前にはフカフカした毛皮みたいな布とツルツルしたやわらかい布がありました。気持ちいいからとひたすらモフモフしていたのですが、梯子が設置された後に、笑顔のスズキさんに持ち去られて梯子の向こう側に去って行ってしまいました……。モフモフ……。
モフモフは第2部でガンジーさんにくるくると巻かれていました。モフモフ。

第2部

しばらく経って、またゆっくりと灯りが暗くなっていって、第2部。
短く淡々とした朗読が入りつつ、静謐な印象が強かった第1部と比較して、かなりダイナミックな演出や音が使われていた印象があります。

特に強く印象に残ったのは、客席ごとサーカスのテントの中に取り込まれたこと。

ステージを取り囲むように円形に並べられた椅子たちの前方数列の後ろ側、天幕のように布がぐるりと広げられて、「外と内」が区切られました。
わたしは「内」側で、そうやって客席を分断する天幕が張られていたのはたぶんほんの数分なんですが、「閉じ込められた」というよりは「知らない場所に招かれた」「笛吹きに連れ去られた」というような感覚でした。逆に「外」の人からは、内側の回転して明滅する光や誰かが動く気配や息遣いが、ふしぎな影絵のように見えていたんじゃないでしょうか。外からも観てみたかったなあ。

テントは数分後には鋏で切断されて、ロープのようになって中央に集められる。緩やかな弧を描いて中心へ向かう無数の線たちは、やっぱりテントみたいだった。

クライマックスに向かうにつれ、布は裂かれ、演奏し続ける2人の体を守るようには縛るように重ねられ、きらきらと振り続ける白い紙吹雪の印象もあって、まるで雪に埋もれて朽ちていく情景を眺めているようだった。旅の一座が演奏を続けながら、しかし確実に死んでいってしまうような。雪のような布に覆われて身動きも取れなくなって、静かに終わっていくような、冷たく美しい光景でした。

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前回は「 ある一夜の夢のようなはなし」というタイトル通り、夢から覚めるような感覚、幻想的な本の読後感のようなものが残りましたが、今回はただただ朽ちる、潰える、終わる、死が満ちる、という感覚がありました。ある種の残酷さが感じられて、その突き放し方がまた美しかった。

すべてが白く覆われて、ゆっくりと灯りが落ちて真っ暗になって、終演。

前回とはまったく違う物語を読んだ気持ちになりました。
冷たくて綺麗な絵をありがとう。

会場を出て

終演後に会場を出たら、みなとみらいの夜景が広がっていました。
夢から覚めても夢、という感覚があって素晴らしかった。このロケーションは最高なので、ぜひまたこの会場でやってほしいなあ。

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帰り道で友だちも言っていましたが、裁ち鋏のジャキン・ジャキンという音はゾッとするくらい美しい。これも楽器の一部なんだなあ、情景や行為を含めて音楽だし、行為や音楽を含めて情景なんだな、という気持ち。

迷っている人は観に行った方がいいよ

「仕立て屋のサーカス 感想」とかでうちのブログに来てくださる方がけっこういるので、最後に「行った方がいいよ!」と熱烈におすすめしておきます。

Webに露出している情報が少ないし、パフォーマンスの内容も「音楽なの?演劇なの?」って今一つはっきりしないから戸惑う人が多いと思うんだけど、気になっている人はとりあえず観てみたらいいんじゃないかな。

内容は、ごく簡単に言うと「コントラバスやトランペットやフルートなどを使ったアンビエント的な演奏」+「たくさんの布や照明を使った即興のパフォーマンス」です。音と布と光を使ったインスタレーションだと思えばだいたいOKです。
時間はおおむね2時間程度、1人で来ている人も友人や恋人と来ている人も家族で来ている人もいます。男女比も半々くらい。小さな子を連れてきている人もたくさんいます。写真も動画も撮影可だし絶えず音楽が鳴っているので、小さな子の声もあまり気にならない環境です。18歳以下は無料です。
写真を見て「あ、いいな」と思った人なら、きっとあの空間を楽しめるはず。迷っているなら、まずは一度足を運んでみることをおすすめします。パンもワインもおいしいよ。

非常に多面的な公演なので、どの部分が響くかによって「要するに何なのか」=「音楽なのか、演劇なのか、パフォーマンスなのか」という解釈は変わると思いますが、わたしはやっぱり、サーカスなんだな、と思っています。

雑感:“僕の町にサーカスが来る” ということ

わたしはPlastic Treeというバンドがずっと大好きで、彼らがずっと掲げていて同名の楽曲もある「サーカス」というモチーフにも強い思い入れがあって。これまで「サーカス」と呼ばれる大きな興行をいくつか観たけれど、でも、「仕立て屋のサーカス」ほど、わたしの中にあるサーカスのイメージとぴったりだったものはなかった。

終演後、曽我さんが「サーカスはいろんな場所へ旅をします。また近くに来ることがあれば、町にサーカスが来たと思ってまた集ってもらえたら嬉しいです」とおっしゃっていたのですが、それがPlastic Treeの「サーカス」の “寒くない冬が来れば僕の町にサーカスが来る” という歌詞とピッタリ重なって。

なんかもう、この日、自分の中でこの2つは分かちがたくくっついて同じ箱に仕舞われました。

また町にサーカスがやってきたら、ものがなしいのにおかしい、奇妙で美しい情景をまた観に行きたいな。

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