NO MUSIC FIGHTER

音楽の話と音楽じゃない話をしようよ

ZABADAK|30th Anniversary ZABADAK in 多摩六都科学館@サイエンスエッグ

はじめてのプラネタリウムライブでした。
まあ泣くだろうと思って行き、案の定ボロボロに泣かされました。

吉良さんに哀悼と感謝を、これからのZABADAKに祝福を。

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2017/02/18 sat
30th Anniversary ZABADAK in 多摩六都科学館
at 多摩六都科学館 サイエンスエッグ
【1回目】open 18:00 start 18:30
【2回目】open 19:45 start 20:15
¥2,800(通し券:5,000)

出演アーティスト

セットリスト(1回目)

  1. にじ・そら・ほし・せかい
  2. マーブルスカイ
  3. 点灯夫
  4. 小さい宇宙
  5. 百年の満月
  6. 遠い音楽
  7. 生まれては別れにむかうわたしたちのために
  8. DEIR PAIDER
  9. Poland

セットリスト(2回目)

  1. 遠い音楽
  2. 星の約束
  3. 点灯夫
  4. 小さい宇宙
  5. 百年の満月
  6. hervest rain
  7. にじ・そら・ほし・せかい
  8. DEIR PAIDER
  9. Poland

セットリスト、まったく自信がないです。
誰か正解を知っていたら教えてください……。

オフィシャルで答え合わせできました。

ライブの感想

初めて乗る西武新宿線で、花小金井駅へ。
遠くに見える鉄塔を目指しテクテク15分ほど歩くと、球体のふしぎな建物にたどりつきます。そこが多摩六都科学館

18:00ちょうどに着いたら、呼び込みはもう始まっていて、通し券組は入場が終わっていました。Oh……通しの10番台だったのに……まあいっか。ライブハウスじゃないしね。
通しで見る人は、受付でもらったちょうちょ柄のテープを左胸のあたりの見える場所に貼ります。ちょうちょ、、(吉良さんは昆虫がすきな方)

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せっかく2回観られるので、1回目と2回目で場所を変えることに。
1回目は最前列が空いていたので、そこに座って待機。途中途中で、プラネタリウムの投射機を担当していらっしゃるスタッフさんがアナウンスを入れていて、それがけっこうおもしろかったです。

「業務連絡です。風部(ザバダックのライブは、特定の楽曲で有志の観客がリコーダーやアンデスで演奏に参加します。“風部”はその有志の人たちの呼称)の皆さん、皆さんに活躍していただくポーランドは、最後に行います。9曲目です。それまではゆっくりと音楽と星空をお楽しみください」

とのことで、曲数も最後の曲も最初に明かしていくスタイルでした。笑

そうそう、ライブ前にはZABADAKの曲が静かに流れていたのですが、それがプラネタリウムとは思えないほど美しい音だった。小峰さんがTwitterで「音響の専門スタッフがいるし、音いいよ」とおっしゃっていたんですが、期待以上の環境。もちろんライブの音もよかったです。プロのお仕事でした、ありがとうございました。

1回目

ほんのちょっと、5分くらい押して開演。

1曲目は「にじ・そら・ほし・せかい」。
投射されているのは当日の空、多摩六都科学館から街を望んだ情景も少し見えています。
ゆっくりと太陽が沈んで夜に移り変わる情景が美しい。

続いて「マーブルスカイ」。……なんだけど、この演出が本当に卑怯で。
最初にパッと文字が浮かんで、それを読むと「1959年12月6日 吉良知彦誕生の日の空」と書かれていて。そこから惑星の配列に視点が切り替わって、吉良さんの命日までの宇宙がZABADAKの歴史と共に投射されるというものでした。
しかも、ぐるぐる回る惑星たちの中には、小惑星ZABADAKもギターの形で示されて、一緒に回り続けていて。

これはダメ、むりです、ボロ泣きだった。わけわからんくらい泣いた。
最後に「katami wake」って文字が出たときの感覚、忘れられない。ああ吉良さんは本当にもういないんだなって、いやもうわかってるんだけど、そんなことはよくわかってるんですけど、改めて思い知らされた感じがしました。
そして同時に、すぐ後に映された「小惑星ZABADAKはこれからも回り続ける」という文字に、彼が創った楽曲たちはこれからも歌われ続けていくんだな、とも感じて。

3曲目「点灯夫」の前には、プラネタリウムのスタッフさん(柴崎さん)の簡単な星空解説がありました。

柴「2014年に当プラネタリウムザバダックさんのライブをしていただいて、昨年に郡山のプラネタリウムでライブをされたときに、吉良さんに“30周年ライブの〆はぜひ当プラネタリウムで”とお声がけしたら、ご快諾いただいて。でも、皆さんご存知のとおり、昨年7月に吉良さんは亡くなってしまいました」
柴「当プラネタリウムで使っている投射機は、同時に1億4千万個の星を映すことができる、ギネスにも載っているものです。ザバダックの音楽は星空ととても親和性が高くて、プラネタリウム業界には、わたしも含めてたくさんのザバダックファンがいます。いろんなプラネタリウムザバダックの音楽は使われています。(音楽を流しながら、星空を投射して)いかがですか?これだけで素晴らしいと思いませんか?」

解説の途中には、途中で声を詰まらせて「すみません、今日は泣かないようにしようと思っていたんですが」としばらく沈黙するシーンもあって。あたたかい声質で伝わりやすいきれいなアナウンスをされる方だったんですが、だからこそ途切れるときに感情が伝わってきてつらかったです。

柴「(小峰さんに)僕が次の曲名を言っても大丈夫ですか?(小峰さん:もちろん!)僕も大好きな曲です。点灯夫」

という案内があって、「点灯夫」。
これ、わたしもザバダックの曲の中で1位2位を争うレベルで好きな曲。

影絵のような街燈が映し出される中で、ポツリポツリと響く音が美しかった。
「小さい宇宙」はこれに続けてやったんだっけ、いったん解説が入ったんだっけ。感情が大騒ぎになっていてぜんぜん冷静に観られなかったので、ちゃんと覚えてないなあ。

でも、「百年の満月」の演出がずるかったのは覚えています。
吉良さんが生まれた日から命日までをたどった「マーブルスカイ」とは対照的に、吉良さんの命日から先へ先へと時間を進めていく演出。科学館から見える星空に、何度も何度も月がのぼってはしずんでゆく情景が映されて、これもボロ泣きしてしまった。
プラネタリウムはデジタルで映像を流しているわけではないので、月が昇ったり沈んだりするときは対応するモーターが凄まじい勢いで回っていて、物理的な問題で100年の満月を実演することはできなかったのですが(笑。解説をなさっていた柴崎さんがどこかのタイミングでおっしゃっていました)歌詞とのシンクロ具合がすごかったです。

で、「遠い音楽」「生まれては別れにむかうわたしたちのために」「DEIR PAIDER」とたたみかけられて、泣き止むタイミングがぜんぜんない。どこで泣き止めばいいんだ……。「DEIR PAIDER」はハンドクラップが響く曲で、いつもならもっと楽しく聴けるのに、 “うたうだけで  恋に落ちる” というフレーズが突き刺さって手拍子もできなかった。

小峰さんがどんな顔で歌っているのか、真っ暗で見えないのが救いだったのかもしれない。

最初にアナウンスがあったとおり、最後は「Poland」。
わたしは風部に参加したことはないのですが、今度の31周年ライブはリコーダーを練習して行こうかなあ、と思いました。なんというか、続くこと、続けていくこと、がじんわりとしみてくる「Poland」でした。

2回目

通し客以外の入れ替えを行って、2回目。
中央後方、プラネタリウム全体がよく見える席に移動しました。

セットリストは少し変わっていて、いきなり「遠い音楽」から。暗くなっていく情景にぴったりとハマっていて、とてもよかったです。
1回目では「マーブルスカイ」で行われていた演出は、2回目では「星の約束」になっていました。

そうそう、1回目の「遠い音楽」は、小峰さんのリクエストで「星座を違う方向から見る=配列がまったく異なるものになる」という演出で。2回目では「hervest rain」でその演出がなされていました。宇宙を突き進んでいくことによって、星座がその形を変えていく情景が素晴らしかったです。

最後の「Poland」、1回目はぜんぜん冷静に聴けなかったけど、2回目は少し落ち着いていられたので、鬼怒さんのギターに耳を傾けていました。グッと曲を引っ張っていく吸引力があって、輪郭をキッチリ定義して連れて行くような感覚があってカッコよかった。

1回目も2回目も、最後は吉良さんが亡くなる前に呟いていた言葉が星空に映されました。

2回目の最後、小峰さんが「これからもZABADAKで歌い続けていく」というようなことをおっしゃってくださったのですが、それまでただの1度も言葉を詰まらせなかった彼女が涙声になっていて、ここでもまた泣いてしまった。なんかもう、泣きっぱなしの3時間だったよ。

プラネタリウムを出たら、エントランスでは昨年のライブ映像が流れていました。
ZABADAKを好きになったきっかけの曲である「ガラスの森」がちょうど流れていたので、それだけ見て帰りました。せっかく泣き止みかけていたのに、吉良さんと小峰さんが並んで歌っている映像を見たらまた泣いたよね……。
科学館を出るときもボロボロ泣いていたので(だってエントランスにいたら嫌でも映像が目に入るんですよ!泣き止むタイミングないよ!)警備員さんと目が合った瞬間の恥ずかしさといったらなかったです、、

1回目と2回目を通しで観て

この日は、解説のアナウンスも含めて、科学館の方たちが作り上げてくださった演出が本当に素晴らしかったです。
ライブの途中で話されていたけれど、今回解説を担当なさっていた柴崎さんは、吉良さんが倒れてしまった去年の30周年記念ライブで「小さい宇宙」の譜面を持っていらっしゃったあの方だったみたいで。
語る言葉のひとつひとつから愛情が感じられる、素晴らしいアナウンスでした。ありがとうございました。

全体として、セットリストの流れも、小峰さんの歌のピッチも、スタッフさんの進行も、2回目の方がライブとして優れていました。
ただ、1回目の拙さというか、生々しさは何にも代えがたいものがあって。
どっちがよかったなんて一概には言えなくって、通しで観てよかったな、と思いました。

今回のライブは、どうしても「30周年=吉良さんが亡くなってしまった年の〆」だったから、立ち止まって振り返るような内容に終始していたし、受け止める観客側も完全に後ろばっかりみているような感じになってしまったけれど……ZABADAKはまだまだ続いていって、吉良さんの曲たちは生き続けるんだから、次は感傷なく楽しめたらいいなと思います。今は無理かもしれないけど、次は。次が無理なら次の次でも、次の次が無理なら次の次の次にでも、とにかく前に進めたらいいな、と思った日でした。

小峰さんも、演者の皆さんも、音響やプラネタリウムのスタッフの方々も、吉良さんも、本当にありがとうございました。次のライブを楽しみにしています。

2017/2/22追記

……とか前向きに〆ようと思ってはみたけど、やっぱりこの日は感傷しかなかった。

わたしは決してコアなZABADAKファンではないのですが、それでもつらかった。アーティストなりミュージシャンなりを物語的に消費することが嫌いなので、できるだけ人格的なものからは距離を置こうと思っているけど、この日は無理だったよ。「プラネタリウムで音楽を聴く」という魅力的なシチュエーションも、素晴らしいプレイヤーによる魅力的な演奏も、感傷で覆いつくされてそれ自体を味わって楽しむことができなかった。まだもうちょっと、時間はかかるかな。ぬるいファンでさえそうなんだから、コアなファンの方や関係者の方は、もっとそうだろうな。

帰路はずっと「かえりみち」を聴いていました。

帰りたいな 帰るよ 帰れない
遊びつかれて 眠った日に
いつまでも いつまでも手をのばす
行きつくことない あの頃へ

 

帰りたいな 帰るよ 帰れない
近くても たどりつけなくて
届きそう でも今は届かない
目かくしされた そのむこうへ