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People In The Box|「空から降ってくる vol.9 劇場編」@パーシモンホール

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2017/01/27 fri
People In The Box
空から降ってくる vol.9 劇場編
at 目黒パーシモンホール
open 18:00 start 18:30
¥4,300

セットリスト

第1部:アコースティック

野蛮へ
見えない警察のための
時計回りの人々
数秒前の果実
さまよう
空は機械仕掛け
ニコラとテスラ
きみは考えを変えた
昏睡クラブ
ダンス、ダンス、ダンス

映像:空から蕎麦が降ってくる
第2部:通常編成

木洩れ陽、果物、機関車
球体
She hates December
新曲
新曲
動物になりたい
冷血と作法
金曜日/集中治療室
逆光
汽笛

ライブの感想

いい意味で自然体な、気持ちいいライブでした。

個人的なことですが、わたしが初めて観たピープルのライブは、2013年夏の「空から降ってくる vol.5 劇場編」。当時は『Ghost Apple』と『Family Record』しか聴いていない状態で、ほとんどの曲がわからなかったのですが、それでも楽しかった記憶があります。
大好きなチェリストの徳澤青弦さんやハイスイノナサの照井順政さんがゲスト参加していたこともあって、音数も多くどこに耳を澄ませても飽きることなくワクワクする演奏でした。このライブでピープルのことが好きになって、旧譜を全部買ってライブに通うようになりました。

そんな記憶があったので、今回の劇場編もとても楽しみにしていました。
そしてその期待は裏切られなかった。今回はゲストプレイヤーなしのピープルの3人だけのステージで、前回の少し張り詰めたよそ行き感(あのときは初めてだったからあんまり思わなかったけれど、今振り返ればそう感じるなあ)とは異なり、自然体の演奏のように感じました。気負わずラフに、それでもいい演奏を聴かせてくれてとても嬉しかったです。

第一部:アコースティック

二部制の公演です。第一部はアコースティックセット。
……いや、便宜上「アコースティック」としましたが、ボコーダーとかキーボードとかバリバリ電気使ってるから本当はアコースティックセットじゃないんだけど……まあ、静かな感じのセットです。

ホールに入ったら、ステージセットがもう美しくて。
天井からまっすぐにぶら下がった照明、そしてその後ろにはまっすぐ伸びる縦長の白い幕。ライブが始まってからわかりましたが、その幕は照明で、楽曲毎に鮮やかに色を変える。シンプルながら美しいセット。
この日は2階席のほぼ最後尾センターだったので、ステージはかなり上から見下ろす感じで。上から見ていると、縦長の光のラインと底に置かれている楽器たちの情景が、まさに「空から降ってくる」という感じでグッときました。

ほぼ定時に静かなSEが流れて、「野蛮へ」からスタート。
波多野さんの前にはキーボードとボコーダーが、山口さんのドラムセットの横には……ボンゴかな?コンガだった?多分ボンゴ。が置かれています。そしてドラムの横になにかがぶら下がっている、マラカス?と疑問に思っておりました。これの実態は、後々「昏睡クラブ」で明らかになります。

メンバーは全員白いシャツ。

波「僕たちの紳士性が表れています。普段から紳士的ですが、それが顕著に出ています」

とのことです。ジェントル。

波「18時半開演というのが少し早いみたいで。僕たちは毎日が夏休みみたいなものだから、あんまりわかんないんですが」
山「それはあなただけですよ」

なんて会話もありつつ。
確かに18:30開演はちょっとバタバタしました。平日は19時がいいな~と思いましたが、多数派かどうかはわからないので、アンケートをとるなりして調べてみたらいいんでない。
開演から30分くらいは途中で入ってくるお客さんが結構いました。みんな急いで来たのね。

ゲストなしの3人での演奏、多彩な楽器でさまざまな音色が駆使されていて面白い。原曲のイメージがそのままアコースティックアレンジに落とし込まれているものもありましたが、まるで違う楽曲かのように印象を変えているものもたくさんあって。
ボンゴが用いられた「数秒前の果実」「さまよう」は、原曲が持つエッジの立った感じや疾走する感覚とは打って変わって、円や波を思い浮かべるようなやわらかい音に。ノイジーなイメージの強い「空は機械仕掛け」は、ピアノの硬質な音色で端正なアレンジになっていました。

とくに印象に残っているのが、唯一アップライトベースで演奏された「ニコラとテスラ」。波多野さんはボコーダー、山口さんはドラムで。ベースの柔らかくも不穏な音色が主軸にあって、声とドラムがそれをさらに広げるような、浸食するような音作りで怖くてとてもよかった。「餌付けの時間だよ」と歌われるときに、首に縄を付けられて引きずり出されるような印象さえあって。よかった。

ピープルの曲は一曲一曲が多面的というか、楽曲内での起伏や対比も多く構造も複雑なものが多いと認識しているのですが、第一部の演奏はさまざまな要素が意図的に削ぎ落されて、楽曲そのものが剥き出しになっているような印象を受けました。普段のピープルに慣れているものもあって、「いつも化学調味料を使った食べものを食べている人が無化調の食べものを食べたときの気持ち」みたいになりました。笑 が、身構えずフラットに聴くことができて、歌や音を素直に受け取ることができたなあと感じます。

なんてことを考えながら演奏に浸っていたら、山口さんがおもむろにマラカス(暫定)を取り上げます。2階席からは黄色い物体としか認識できないのですが、1階席から忍び笑いがどんどん広がっていく。何?と思ったら、どうやらマスカラではなく鳥のおもちゃだったようです。

これ……。

山口さんがこのおもちゃ2体を両手に構えて、波多野さんの「動物愛護団体の方はいらっしゃいませんよね?」という問いかけから始まったのは「昏睡クラブ」!
いや、大好きな曲だからやってくれて嬉しいし、鳥の叫び声が意外にも楽曲にハマっていたし、あのテンポで鳥を握り続ける山口さんの握力は実に素晴らしいのですが、ダメ、演奏中ずっと笑っていました。笑いの沸点低いからやめて……止まらなくなる……。ずっとニヤニヤしていたし、途中で何回かたまらず吹き出しそうになったし、なにこの腹筋が鍛えられるライブ。

山「ドン・キホーテで708円で買いました」
山「これでビートを刻む前提で買いに行ったから、当然試奏するんですよ。結構個体差があって。で、僕が試奏していたら、観光客の中華系の家族がすごいこっちを見てた。あいついつまで鳴らしてるんだよ?!みたいな。僕が買ったあとに彼らもこれを買ったことでしょう」

「ビートを刻む」「試奏」などの表現でいちいち笑ってしまって噎せて大変でした。
昏睡クラブ演奏終了後、立派に務めを果たした鳥2羽は、普段のMCにおける物販のようにステージにぶち捨てられておりました。合掌。

そんな一幕もありつつ、最後は「ダンス・ダンス・ダンス」で第一部終了。
背景のライトはやわらかい陽の光の色、橙と黄色の間のような美しい色でした。

映像:空から蕎麦が降ってくる

山口さんが遠方に出かけ、指定されたものをゲットしてくる幕間映像。
わたしは前回の蜂蜜回しか観ていないのですが、あれと比べたらだいぶ平和的で楽しそうな映像でした。笑
長野県安曇野市に行って、蕎麦を打ってわさびを取ってくるという内容。レコーディング中の波多野さんと山口さんの会話を受けてのオーダーのようです。

波「最近蕎麦の美味しさに目覚めた。前はぼそぼそしていてあんまり好きじゃなかったんだけど」
山「蕎麦は美味しいよね。機会があれば自分で打ってみたい」

完全に隠し撮りのアングルで、上の会話が録画されていました。自分からフラグを立ててしまったんですね……。波多野さんがお蕎麦に目覚めたのは有村さんとお蕎麦を食べてからなのかしら。

内容的には、山口さんがごく普通にお蕎麦を打って、わさびを取って、東京で波多野さんと山口さんが「おいしいおいしい」とお蕎麦を食べる、というだけのほのぼのムービーでした。わさびがおいしそうでした、いいなあ(※中の人は蕎麦アレルギーなので蕎麦は食べられません)。

第二部:通常編成

映像が終わって、第二部。
第一部で使用されていた天井吊りの照明や縦長のライトは撤収され、ごくシンプルな舞台セットになっています。

いつものSEでメンバーが入場して、「木洩れ陽、果物、機関車」から。
先日発売された『Things Discoverd』に収録されているので新曲と言ってもいい曲ですが、ライブではかなり演奏されているので「新しい!」という感じではなくて。ゆっくりと幕が開くような、始まりを感じさせる美しい曲。大好き。

エッジのきいた「球体」のあとは、1st ミニアルバム『rabbit hole』から「She hates December」。

波「今年はPeople In The Box 10周年なんですが、どこから数えてかというと、最初の作品を出してから。僕らはいつも作品を作ることには重きを置いてきたので、どこから数えるかって考えたら、やっぱりこれが一番いいと思って。」
波「最初に出した『rabiit hole』というアルバムから、1曲やります」

というMCの後に演奏されました。
『Things Discords』を購入したときに「わたしにとっての4曲はどれだろう」と考える遊びをしていたのですが、それが「数秒前の果実」「さまよう」「火曜日/空室」、そして「She hates December」で。この日のライブは「火曜日/空室」以外は全部聴けた、嬉しかったです。
あれだけの曲数の中から4曲選ぶのは結構大変で、たぶんその日の気分によって選曲は毎回変わると思うのですが(たとえば今日選ぶなら「逆光」「真夜中」「冷血と作法」「She hates December」なので、もうだいぶ違う。明日選んでも違うものになると思う)、それでも必ず入れるだろうというのが「She hates December」で。もう気持ち的にはクライマックスになっていました。

でもライブはこれからが佳境。立て続けに名前もついていない新曲が2曲披露され、どちらも素晴らしかった。その後はこれまた新しい「動物になりたい」と続き、さらに「冷血と作法」!このブロックはピリッとした緊張感があって、ライブの流れ的には一番引き締まったところ。聴いていてゾクゾクしました。

そこから山口さんのMCへ。張り詰めていた空気がふっと緩む感じがいいですね。笑

山「ホールだからエコーがあんまりわからない」綺麗に響いちゃうんですよ。
山「安曇野と何の関係もないけど、観光大使を真剣に狙っています」
山「今回お土産を買ってきました。椅子の下を見てください。わさびふりかけと、わさびマヨネーズと、わさび七味(かな?忘れちゃいました)を椅子の下に貼り付けています」
山「今!今見て!あったら”あった!”って言って!……いない。平日だからポコポコ空席もありますしね、残業とかあるもんね。2階4列の○番(忘れました)、誰かいる?」

山口さんが言った番号の座席には誰もおらず、両隣に座っていた人たちがお互いに譲り合いつつマヨネーズを掲げていました。

波「どうぞどうぞみたいなやり取りで和みました」

山「今回カーディガンを作りました。素材から選んで、デザインも考えて。いいものを作ろうと思ったら、高くなっちゃった。でもピープルはそういう感じです」
波「これ着心地がいいよね。つるつるしてる」
山「つるつる?」
波「つるつるって表現が適切かはわからないんだけど、ニットって絶対どこかで引っかかる感じがするのに、それがない。するっと着られる。触り心地のいい動物を撫でたりする感覚で、俺はこのカーディガンを羽織っている人を撫でてしまうかもしれない」
山「それは不審者ですよ」

山「iPhoneカバーも作りました。iPhoneじゃなくても使えます。前作ったときiPhone利用者が多いのかなと思ったら、意外とそうでもなくて。今回のはAndroidでも使えます。僕も今度iPhone7に買い替えたら使おうと思います」

物販はこんな感じだったかなあ。
そのあと超甲高い女子高生ボイスに切り替えて、お決まりの「全力でぶっ殺しにいくんでよろしく!」から最終パートへ。

「金曜日/集中治療室」「逆光」と、音色が派手でダイナミックな曲が続きます。照明も華やかで綺麗。印象的だったのは、「逆光」の前のドラムソロ。わたし山口さんのプレイってシンバルの印象がかなり強いのですが、ここではシンバルをほとんど使わずにタムがメインで使われていて。うねるようなリズムと変動する音階が、ドラム単独であるにもかかわらずベースが入っているかのようにメロディックでもあって、本当に素晴らしかった。あれ音源で欲しい……!

最後は「汽笛」。素朴かつ華やかという不思議な印象を受ける曲。最後に音がバシッと止まるところも含めて、この日のライブの締めとして最適だと感じました。

メンバーが捌けて、スクリーンにはエンドロール。セットリストやメンバー、スタッフさんたちの名前が映し出されます。
字が小さくてあまり読めなかった(視力はそこそこいい方なので、同じように読めなかった人も多かったのでは)のですが、綺麗な終わり方でした。初めから終わりまできちんと設計されて制御されている、という印象がありました。でも、演奏は抑制されていたり過剰だったりするのではなく、フラットで気持ちよくって。いいライブでした、ありがとうございました。

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この日は、開演前やエンドロール、終演後に流されるSEも全て波多野さんが作成したものでした。で、入場特典でSEを収録したCDが配布されていて。

帰宅してからさっそく聴いたのですが、流通しないことがもったいないくらい良質な楽曲たちでした。今日の思い出と一緒に、このCDも大切にしよう。