NO MUSIC FIGHTER

ライブレポ90% CDレビュー10%

Plastic Treeのレーベル変遷と9枚のベストアルバム

f:id:haru1207:20170124213153j:plain

「聴いたことはないけど名前は知ってる、ちょっとだけ気になる」というアーティストの音楽を聴きたいとき、YouTubeSoundCloudはめっちゃ役に立つ。Bandcampもいいよね。

ただ、長く活動しているアーティストの曲を知りたいとき、膨大な曲数の中から「一番その人たちらしい曲」を探すことって、けっこう難しい。コアな部分を知らないまま「好きじゃないな」って判断してしまったらもったいないから、ちゃんと「これがこのアーティストのおすすめですよ!」と太鼓判が押されているものを知りたい。そんなときに役立つのは、やっぱりベスト・アルバム。

個人的には、知らない音楽を聴くときは「片っ端から試聴する」「人におすすめを尋ねる」「一番新しいのと一番古いをセットで聴く」のいずれかを選択するので、あんましベスト盤のお世話にはならないのですが、「古すぎて試聴できない」「周りに知っている人がいない」なんてときにはベストが役に立つよね。間口が広いし、いろんな時代の音を幅広く聴ける点も魅力的。

でもプラの場合、ベスト・アルバムはそういった悩みをあんまし解決してくれない。
だってベストアルバムだけで9枚もあって、どれを聴けばいいかわからないんだもの。

  1. Cut 〜Early Songs Best Selection〜 (2001)
  2. Single Collection (2001)
  3. Premium Best (2002)
  4. Best Album 白盤 (2005)
  5. Best Album 黒盤 (2005)
  6. Plastic Tree "e.p." What is "Plastic Tree"? (2007)
  7. B面画報 (2007)
  8. ゲシュタルト崩壊 (2009)
  9. ALL TIME THE BEST (2010)

多い。多いです。2001年から2010年まで、2~3年毎にベストアルバムを出してる。ベストの定義とは何か。

9枚もあるのですが、内容的に充実しているものは少なく、利権関係の大人の事情のにおいがめっちゃする。せっかく興味を持ってくれた人が手に取ってくれても、この内容じゃ魅力の大部分が伝わらないのでは?みたいな盤が多いです。

レコード会社移籍がだいたいの原因(たぶん)

ベストアルバムがたくさん出ている背景には、2~5年スパンのレコード会社移籍があります。

アーティストがレコード会社を移籍するとき、既存のデータだけで収益が得られるベストアルバムが出されるのは珍しい話ではありません。
プラも上に挙げた9枚のベストアルバムのうち、3枚はワーナーミュージックとの契約終了時に、別の3枚はユニバーサルミュージックとの契約終了時にリリースされています。

簡単にまとまめると下表みたいな感じ(レーベルがわかりづらいのでそのうち書き直します~)。

ワーナー 1997 ▼メジャーデビュー
1998  
1999 ▼所属事務所がSWEET-HEARTに
2000  
2001 ▼大正谷脱退・ワーナーとの契約終了
・Cut 〜Early Songs Best Selection〜
・Single Collection
インディーズ 2002 ・Premium Best
ユニバーサル 2003  
2004 ▼ユニバを一時離脱
インディーズ 2005 ▼所属事務所をJ-ROCKに移籍
・Best Album 白盤

・Best Album 黒盤
ユニバーサル 2006 ▼ユニバに復帰
2007 ▼メジャーデビュー10周年
・What is "Plastic Tree?"
・B面画報
2008  
2009 ▼ササブチ脱退
ゲシュタルト崩壊
徳間 2010 ▼ユニバとの契約終了
・ALL TIME THE BEST
2011 ▼徳間との契約終了
ビクター 2012 ▼メジャーデビュー15周年
2013  
2014  
2015  
2016  
2017 ▼メジャーデビュー20周年

こうやってまとめてみると、移籍の他にもメンバーの脱退やアニバーサリーイヤーが契機となっているみたい。あとあれね、ベストアルバムを量産した罪人はユニバ。ユニバめ。

ちなみに、所属していたレコード会社とその時期にリリースされたシングルを見比べてみると、「ユニバは竜太朗露出で売りたかったんだね……」とか、「たった2年間だった徳間では徹底的に売り上げを求められていたんだろうなあ……」とか、微妙な傾向の違いが見えてきて面白いです。

それはともかく、レーベル変遷の流れはなんとなくわかったので、自分の頭の整理も兼ねて9枚のベストアルバムを5つの種類に分けてみます。

  • 初めて聴く人におすすめ
  • ファンになったらおすすめ
  • マニア向け
  • 特定の場合のみおすすめ
  • いらない

プラ聴いてみたいけどベストが多すぎてどれを聴けばいいのかわからない!という人の役に立つといいな~と思うと同時に、「ネットでプラの知らないテイクを聴いたんだけど、あれ何に収録されているの……アルバムもシングルも全部持ってるのに……え、ベスト?まじで?」っていうベストアルバム眼中になかったわたしみたいな人の役にも立ってほしいな~と思っています。

なお、ほとんどのベスト・アルバムが生産停止状態になっています。
検索してみて新品在庫がなければ中古を探してみてください。どれも入手困難で高騰したりはしていないはずなので、2,000円そこらの適正価格で入手できると思います。

初めて聴く人におすすめ

  • ALL TIME THE BEST

一番新しくて、一番真っ当なベスト・アルバム。
デビューから2010年までの楽曲が幅広く網羅されていて、ヒットシングルばかりでなくライブの定番曲なども入っています。上で「ベストを量産した罪人はユニバ」と書きましたが、一番ちゃんとしたベストを出してくれたのもユニバ。ありがとうユニバ。

2枚組計34曲収録、お値段は3,600円。お手頃。
エコバック付きの初回限定盤5,966円もありますが(まだ新品が手に入ります)、グッズに興味がなければ通常盤で問題ありません。エコバックとジャケットの色以外はなにも変わらないです。

人におすすめしておきながらわたしは持っていないのですが、収録曲を見ると「かゆいところに手が届くベスト」という感じがして好感が持てます。いきなり「monophobia」「少女狂想」というDisc 1の流れにはちょっとニヤッとしてしまいます(どちらもアルバム曲かつわりとマニアックな曲です)。個人的に曲順はちょっとなー?と思いますが、それは好みの問題かな。

曲数的にも選曲的にも、「初めて聴く!」という人にはおすすめのアルバム。

ファンになったらおすすめ

  • B面画報

名前の通り、シングルのB面曲を集めたアルバムです。
メジャーデビュー10周年の際、5,000枚限定でリリースされました。

Plastic Treeはシングルのc/w曲をあんまりアルバムに入れない傾向があります。全然ないわけじゃないけど、わりと珍しい方。
だからシングルを買っていないとc/w曲は永遠に聴けないなんてことになりがちなんですが、それがめちゃもったいないわけです。プラのB面は本当に面白いから。

制約の多いシングル表題曲と比較して、カップリングは割と自由に作っている印象があります。アルバムと違って全体的なパッケージングもそこまで強く考えなくていいだろうし、縛りが少ない感じ。実験的な要素を持つ曲も多く、聴けば聴くほど味が出てくる良曲揃い。

プラのシングル表題曲は「長谷川作曲+有村作詞」あるいは「有村作詞作曲」が多いのですが、B面は違う組み合わせの楽曲が多数収録されています。収録されている15曲のうち8曲がナカヤマさん作曲の楽曲だったり、正くんが作曲だけじゃなくて作詞も担当していたり。「白い足跡」みたいにシングル曲とはまた違う正くんの個性が強烈に出ている楽曲もあったりして、かなり癖はありますが本当に面白いです。

他アルバムとかぶっている収録曲も少ないので、『ALL TIME THE BEST』なりオリジナルアルバムなりを聴いて「好きだな、もっと聴きたいな」と思った人におすすめしたいアルバム。下北界隈のギターロックとか残響界隈のポストロックとかが好きな人にも推したい。
個人的にも、再生回数の多い大好きな作品です。

マニア向け

プラツリの曲をコンプリートするんじゃ!という気合いの入ったマニアだけが買えばいいベストアルバム群です。
最初に買う1枚としてはおすすめしないし、マニアじゃなければ無視してもいいと思う。「オリジナルアルバムは全部持ってるよ、アレンジ違いや映像には興味ないよ」って人なら買わなくてもいいやつ。逆に言えば、それが気になる人は買った方がいい盤です。

あとは、うーん、『ALL TIME THE BEST』を買って気に入ったけどオリジナルアルバムを集めるお金がない!でも初期の曲が気になる!みたいな人には向いてるのかな。でもそういう人には「パペショ買った方がいいよ~」とすすめたいです。

Cut 〜Early Songs Best Selection~

メジャー初期に契約していたワーナーミュージックと契約が切れるタイミングでリリースされたうちの1枚です。
選曲的には、インディーズ~ワーナー時代の曲、アルバムで言えば『Strange Fruits』~『Parade』までの代表曲を詰めた感じ。メンバーセレクトとのこと。

このアルバムの特徴は、全曲リテイクされていることです。
既存アレンジと聴き比べてみると面白い。ここに分類した4枚の中では一番おすすめ。

ちなみに、このアルバムは『Sink』~『Parade』と同じ成田忍さんがプロデューサーです。成田さんのお仕事が好きか嫌いかでかなり評価が分かれる気がします。ストリングスやシンセ、コーラスが追加されたりと、良くも悪くも装飾の目立つおもちゃ箱みたいなアレンジになっているので、嫌な人は嫌かも。

とはいえ、面白いアレンジも結構あるので、気が向いたらどうぞ。わたしはCut版の絶望の丘とかまひるの月とか、コーラスがリッチで好きです。

ワーナーから出ている3枚はデータでも販売されているので、CDが見当たらなければiTunes Storeで買えますよ。

Single Collection

ワーナーを出るときにリリースされたベストその2。
これは名前の通りシングル集で、収録されているテイクもシングルと同じ。オリジナルアルバムやシングルを持っているならいらないアルバムなのですが、ボーナストラックで「プラネタリウム('98 Version)」「液体('98 Version)」の2曲が収録されているので、聴きたい人にはおすすめ。

iTunes Storeを調べてみたら、上記ボーナストラック2曲は個別でも購入できるようになっていました。他曲は持っているのであれば、この2曲だけ買ってもいいかも。

プラネタリウムはアレンジだけじゃなくて歌詞も違ったりして面白いよ。

Premium Best

ワーナーのやつその3。
全曲リテイクの『CUT』やシングルのみ収録の『Single Collection』と異なる、いわゆる一般的なベスト盤です。

これもボーナストラック目当てで買うべきベスト盤なのですが、絶対に守るべき大事なことがあって、それは「2010年に発売された再発盤を選ぶこと」
初回盤買っちゃダメです。絶対再発盤。「レア!初回盤!」とか煽ってあってもコレクター以外は買っちゃダメ。そっちはいらないやつです。

初回盤には、ボーナストラックとして「オルガン(Alternative Guitar Solo Version)」と「トランスオレンジ(Live Version)」が収録されていたのですが、2010年の再発に当たって、「割れた窓(Live Version)」と「ホタル」が追加されています。「ホタル」は『雪蛍』の原曲というか、バンドアレンジ版。歌詞もちょっと違うよ。

iTunes Storeでは、旧盤ボーナストラックの2曲は個別購入可能でしたが、再発盤で追加された2曲は個別購入できませんでした。旧盤を持っている人も、諦めてアルバムごと買いましょう。うちには『Premium Best』が2枚あります。うう……古い方は今度クロチャかブックオフに売ります。

なお、初回盤は昔懐かしのCDエクストラ(音楽以外のデータが入っているCDのこと)仕様で、プラネタリウムのPVが収録されています。でもプラネタリウムのPVは『二次元ヲルゴール3』にも収録されているので、PVが見たい人は『二次元ヲルゴール』シリーズを買った方がいいんじゃないかな。

ゲシュタルト崩壊

『シャンデリア』『ネガとポジ』『ウツセミ』収録曲を集めた、2009年発売のベスト盤。
これはレーベル移籍ではなく、ササブチ脱退・佐藤加入のタイミングでリリースされています。

DVD目当てで買うべきベスト盤。
初回盤と通常盤がありますが、買うべきはDVDが付属している初回盤のみ。通常盤は、オリジナルアルバムを全部持っているなら不要です。オリジナルアルバムを持っていない場合も、曲目当てならたった3枚だしオリジナルを買った方が面白いと思うよ。

DVDには、この作品にしか収録されていない「Dolly」「回想、声はなく」のMVが収められている他、「梟」のMVも「プレミアムVer.」になっているそうです。

映像に興味がなければ買わなくていい盤だとも言えます。わたしは持ってないです。2009年夏とか心がバキバキに折れていたので、リリースされていたことも数年知らなかったよ。

特定の場合のみおすすめ

  • Best Album 白盤

 「有村さんのソロを聴いてプラに興味を持った、彼の曲をメインで聴いてみたい!」という人におすすめです。全13曲中6曲、つまり半分近くが有村さん作曲の楽曲。歌詞はカバー以外全て有村さん。メロディアスで聴きやすい歌もの中心の選曲です。

逆に言えば、それ以外の人にはあんまりおすすめしません。
詳しくは、下記「いらない」カテゴリの『黒盤』で。

いらない

いらないは言い過ぎですが、おすすめはしない盤です。
特に理由がない限りは、うっかり初めてのPlastic Treeで手に取らないでほしいな~と思っています。

Best Album 黒盤

『白盤』と『黒盤』は、2005年にリリースされたベスト・アルバムです。
2003~2004年の2年間契約していたユニバーサルミュージックから離れるタイミングで発売されました。どう考えても資金回収用の金稼ぎアルバム。
この年はマネジメント事務所の移籍もあったので(たぶん1年間のインディ落ち期間はそれと関連するやつ)ユニバ側だけの意向じゃないのかもしれないけど。ベストはオリジナルより利益率が高いだろうから、この時期にリリースせざるを得なかったのはなんとなくわかるんですけど……。

「いらない」と判断する理由は、「収録曲が特定時期の楽曲に集中しており、対象範囲が狭い」+「このアルバム以外でも聴けるトラックしか収録されていない」という2点。

『白盤』と『黒盤』を合わせて収録曲は全29曲、そしてそのうち19曲が『トロイメライ』『シロクロニクル』『cell.』の3枚の収録曲です。直近の3年間の曲が7割近くを占めるって冗談でしょう。
『Premium Best』とできるだけ曲が被らないようにしたのかもしれませんが、そんな気遣いが必要な時点で、ベストアルバムをリリースするタイミングじゃないですよ。

それでも2010年までは「新しめのプラのベスト」として入門とか出戻り用に役立ったのかもしれませんが、2010年以降は最初におすすめした『ALL TIME THE BEST』があるので、入門編としてもあまり役立たなくなりました。
2002~2005年の音作りが特別に好き!という人には価値があるかもしれませんが、だったらオリジナルアルバムを買った方がいいと思うの。

しかも、完全に「できあがったやつを詰め直しただけで売り出す商法」で作られたベストアルバムなので、付加価値が全くないです。このアルバムでしか聴けない曲、がゼロ。唯一「水色ガールフレンド」だけはアルバムに収録されていないシングルテイクですが、それはシングルを買えば解決する話だもの……。探せば中古あるよ。

あと、黒盤は選曲も微妙な気がするよ。一応『白盤』と『黒盤』は「バラード中心」「ハードな曲中心」と楽曲を分けているみたいですが、でも黒盤に「Sink」入ってるし、「エンゼルフィッシュ」も入ってるし。黒盤にはアキラ曲が多いので、その流れで「エンゼルフィッシュ」も黒盤なのかなあ、と思うものの個人的には釈然としません。

Plastic Tree "e.p." What is "Plastic Tree"?

海外向けにリリースされたベストアルバム。この年は初のワールドツアーがあったので、それ関連なのかな?「Colosseum」というドイツのレーベル(たぶん)からリリースされています。
2005年5月~2005年12月にかけて事務所レーベルから発売された4枚のシングル、『讃美歌』『名前のない花』『Ghost』『空中ブランコ』の表題曲とカップリングが収録されています。
各表題曲のMVが収録されたDVD付き。

Plastic TreeのCDが手に入りづらい海外だから価値があるのであって、日本国内にいるのであれば、普通に『シャンデリア』と『B面画報』を買った方がいいと思います。
MVも『ゲシュタルト崩壊~映像編~』を買った方が、より広い範囲を網羅できていいんじゃないかな、と。

逆に言えば「上記4シングルとそのMVが飛びぬけて好きで、他の曲とかMVはいらない」という人にはぴったりかな。

そろそろB面画報②がほしいな~

プラはベストアルバムいっぱいあるよな~と思ってちゃんと数えてみたら、9枚もあってびっくりしました。ほんとに多いよね。でもそろそろ10枚になってほしいな。
というのも、B面画報がリリースされてそろそろ10年経つから。アルバムに収録されていないB面曲が増えてきたんですよ。

「Dolly」(両A面だから正確にはA面だけど)とか「サイケデリズム」とか、最近なら「リコール」とか「トゥインクル」とか、またアルバム未収録の良いB面曲が溜まってきているので、デビュー20周年の節目で出してくれたらいいなあと思っています。移籍しちゃったからこの名前だと無理かな?まあでも、新しいB面集がほしいな、出るといいな、むしろB面ツアーしてほしいな、という願望を呟いて〆とします。

広告を非表示にする