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ライブレポ90% CDレビュー10%

Plastic Tree|2nd アルバム「Puppet Show(パペットショウ)」(1998) 感想

Plastic Tree CDレビュー

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Plastic Treeのファンに「Plastic Treeで最も好きなアルバムはどれ?」と質問したら、最も名前を挙げる人が多いであろう名盤。
1998年のアルバムですが、未だに最高傑作の呼び声が高い「Plastic Treeの原風景」とも言える作品です。現在でもライブで演奏される代表曲が多数詰め込まれた、傑作アルバムのひとつ。略称は「パペショ」。

当時はほぼ全ての楽曲が「長谷川作曲・有村作詞」のコンビによって作られており、楽曲の振れ幅は現在ほど広くありません。その分アルバムの最初から最後まで、一貫して濃密な世界観を保持しているとも言えます。

全体を通して陰鬱な雰囲気が濃く、2017年現在の音作りと比べると、かなり低音に寄った音の構成。歌詞は内向的で、病的とも取れる表現が多数見受けられます。また、有村さんがポリープ除去手術を受ける前の作品なので、声質の癖が現在よりも強く、ねっとりとした印象があります。

間違いなく聴く人を選ぶ作品ですが、同時に、ハマる人はとことんハマる作品。
かく言うわたしも、プラにどっぷりハマるきっかけとなったのはこのアルバムでした。

当時のPlastic Treeの閉塞感や焦燥感が丸ごとパッケージングされていて、聴く人の暗い部分や未成熟な部分を抉るような仕上がりになっています。

円熟期を迎えた現在の彼らでは、良くも悪くも作ることのできない、初期だからこその金字塔です。

アルバム詳細

発売日:1998/8/26
発売元:ワーナーミュージックジャパン
プロデュース:西脇辰弥

初回盤:絶版
2010年に再販盤発売

収録曲
  1. Intro
  2. May Day
  3. リセット
  4. 絶望の丘
  5. 幻燈機械
  6. 「ぬけがら」
  7. 本当の嘘-StudioLive-
  8. monophobia
  9. クリーム
  10. 3月5日。
  11. サーカス

楽曲の感想

1.Intro

名前の通り、アルバムのイントロ。
物悲しいサーカスのような三拍子の音楽と、意味の取れない低い声の語りとで構成されています。
音楽のテンポは一定でなく、声も何を言っているかわからない、どこか不気味なトラック。1分に満たないほんの短い導入部ですが、ここで一気に『Puppet Show』の世界に引きずり込まれます。

当時のインタビューを読んでみると、正くんいわく「チェコ辺りのヨーロッパっぽい感じ」「劇を見ている感じ」にしたかったとのこと。

なお、奇妙な言葉を喋っている低い声は、逆再生+低速にしたRyutaroの語りです。

逆再生されている音楽はアルバム最後の曲「サーカス」のメロディ、語りは下記の台詞。

はーい、お会いできて嬉しいです。
ここは夢の世界よりも驚きだらけ、現実の世界よりも悲しみだらけ。
そんな暗闇サーカス団へようこそ。
ギター・Akira、ベース・Tadashi、ドラム・Takashi、唄・Ryutaroでお送りします。
君たちの忘れていた風景が、僕たちの病んだ微笑みで思い出せるといいなあ。

意味がわからなくてもこわいけど、わかってもこわい。
“君たちの忘れていた風景”……幼児期の漠然とした不安や自己嫌悪、妬み、正体のない恐怖などが一気に引きずり出されるような、このアルバムに相応しい導入部です。

2.May Day
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

ラウドなベースラインが印象的なアップテンポの曲。
数年前まではライブの定番曲でもありました。ここ最近はあんまりやらないね。ちなみに音源のテンポは130bpmくらいですが、ライブだと160bpmくらいの高速ナンバーになります。

この曲に限らず他収録曲にも言えることですが、濃厚なUKパンクの匂いがする。

ラウドで荒っぽいサウンドの上に、Ryutaroのふわふわした声が乗っているアンバランスさが魅力的。サビではメインボーカルに呟くようなウィスパーボイスが重ねられており、浮遊感をより強くしています。

“手の中の蝶 七才の午後” ”ポケットの中バタバタした、恐くなる僕”などのフレーズからは、ヘルマン・ヘッセ「少年の日の思い出」が想起されます。
この曲のみならず、全体的に『Puppet Show』からはヘッセの香りを強く感じる。細かくは「幻燈機械」のところに書いています。

なお、毎年5月1日になるとTwitterのあちこちで\May!/\Day!/\メイ!/\デイ!/と海月が叫び出す事象が見られますが、そういう文化なのでそっと見守ってください。ここ数年は有村さんもやってる。

3.リセット
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

ねじ曲がった疾走感のある曲。
年末公演の定番曲です。
ライブだと、有村さんの「いやーなことは全部ー?」という前フリに対して\リセットー!/と返すことがお約束。

普通だったら不協和音として使わないような音がゴリゴリ入っているサウンドが印象的。
“クレヨンで君が書いた地図で、家を探したけど ポイントが欠落して相対比がまるででたらめで” という歌詞と、その言葉を音にしたかのように捻じれ感のあるアレンジが面白いです。

前曲のMay Dayは「ラウドな楽器陣に浮遊感のある声」という造りでしたが、こちらは歌もかなりラウドな印象。がなったり叫んだりと、ふわふわした印象を吹き飛ばすような声が目立ちます。

歪なまま突っ走るような、奇妙な疾走感のある曲です。

4.絶望の丘
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

1998/7/25発売のシングル『絶望の丘』表題曲。

前2曲とは一転して、クリーントーンのギターと歌うようなベースが響く、ミドルテンポのポップナンバー。メロディが印象的な、良質なポップロックです。
……タイトルは「絶望の丘」ですけど。笑

儚く透き通るようなメロディが美しい。

イントロも含めてベースラインが印象的な曲ですが、2Aのラウドなリフからクリーンへの切り替えなど、ギターの聴きどころも多いです。この曲はギターの音色にかなり振れ幅があって、ときどき覗く攻撃的な音色がスパイスになっています。クリーンな単音フレーズの裏にザクザク感のあるリフが重ねられていて、単に綺麗なだけじゃないアレンジが楽しい。

ちなみにこの丘は、「ビジュアル系3大丘」のひとつに数えられている有名な丘です。
頭がぼんやりして人が消えたりするので待ち合わせには向きませんが、立ち尽くすにはうってつけの名所です。

5.幻燈機械
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

7:24に及ぶ、抒情的な大作。
聴いただけで情景が思い浮かぶような、郷愁を煽るサウンドと歌詞が耳に残ります。

アルバム収録曲の中で唯一、ストリングスが導入されています。イントロ以降何度も繰り返される、ストリングスとギターのユニゾンフレーズが印象的。
ストリングスだけでなく、歌詞でも「ポルカ」という言葉が用いられるなど、ここまでのロックバンド然とした流れからやや離れた楽曲です。かといって決して中休み的ではなく、アルバムの後半に向けた流れを作る重要な曲。

Bメロの裏で歌うギターも素晴らしいのですが、やはりこの曲はリズム隊が秀逸。Aメロのタムとベースの絡みが躍動的で、ともすれば中だるみしそうな曲をグッと引き締めています。

また、この曲は歌詞が素晴らしいです。大好き。

何度も繰り返される “なんでいつも僕は、君のことが解らないの?” というフレーズが、外界に対する潜在的な恐怖や期待、理解されることに対する渇望、狂おしいまでの承認欲求を想起させます。
これも「君たちの忘れていた風景」のひとつだよね……。Ryutaroまじこわい。

初期の有村さんの歌詞全体に言えることですが、2002年『トロイメライ』まで、基本的に彼の詞には「特定の他者」の存在が感じられません。歌詞の世界に存在するのは「僕」と「僕以外」だけで、他者は個人として分化されていない。もっといえば、「僕」と「僕以外」の境界線も明確ではないように感じられます。
そのうちプラの歌詞に関するエントリを書くつもりなので、そちらで細かく言及できたらいいなと思いますが、「幻燈機械」も含めて『Puppet Show』の歌詞における描写の多くは幼児期の心象風景に似た境界が曖昧な世界です。

 “なんでいつも僕は、君のことが解らないの?” “なんで君はいつも、僕の前で笑わないの?” と問いかけられる「君」も、明確な個人であるという印象を受けません。
「君」とは「不特定多数の他者」のメタファであり、むしろ1Aで “幻燈機械のせいで 部屋は亡霊だらけだ” と歌われる「亡霊」と、本質的に同義であるとも読めます。

で、こういった「完全な相互理解に決して辿り着けない絶望」「世界と馴染むことができない疎外感と孤立」は、アウトサイダーを描き続けたヘルマン・ヘッセと共通するものなんですね。
プラの歌詞はたびたび「文学的」と称され、有村さん自身もさまざまな作家の影響を公言していますが、たぶんヘッセの名前は挙げていません(※わたしが知らないだけかも。このアルバムはリアルタイムのリスナーではないので……知っている人がいたら教えてください~)。でも、パペショは本当に、アルバム全体がヘッセだなあと感じます。

作曲者である正くんにとっても重要な曲らしく、2012年発売のシングル『静脈』特典映像において「Plastic Treeの中で一番好きな曲」として挙げられています。

6.「ぬけがら」
  • 作詞作曲:Ryutaro

『Puppet Show』で唯一の、Ryutaro作曲による楽曲です。
訥々としたアコギの弾き語りで始まるメロディの美しい曲ですが、サビでは一転 “本当の気持ちじゃないならどんな事ももうしないで” と、胸を掻きむしるような声で絶叫します。ABメロはクリーントーンのギターとシンプルなドラムが入っているだけだったサウンドも、サビでは一気に爆発する。1サビ以降どんどん不穏さを増していくギターの音色が、不安を煽るようでこわい。

短い曲ですが、切実な感情がギュッと詰め込まれた濃密な曲。
か細く歌う儚い声が、血を吐くような絶叫に変わる、その落差にゾクゾクする。歌の力が極めて強い一曲だと感じます。
わたしにとっては『Puppet Show』の世界にのめり込むきっかけとなった曲でした。

個人的に、2012年『インク』収録の「ライフイズビューティフル」は「ぬけがら」の系譜にある曲だと思っています。情念の込められた、サビで爆発する曲。

以前は夏ツアーの定番曲だったのですが、ここ最近(具体的に言うと、千プラをやった2013年以降)は夏ツアー自体をやってくれないので、ずいぶんとご無沙汰です。
夏にこそ聴きたいプラ曲もあるので(ぬけがら、グライダー、エンゼルフィッシュ、まひるの月、あとメランコリックも)、また夏ツアーやってくれないかなあ。

7.本当の嘘-StudioLive-
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

1998/2/15発売のシングル『本当の嘘』表題曲、スタジオライブ版。
ポップで疾走感のあるロック・チューン。シングルらしく聴きやすい良曲です。

スタジオライブ版だけあって、シングルよりも勢いのある録音になっています。わたしはこっちの方がすき。
この曲だけ全員一緒に演奏した一発録りですが、他曲と比べて浮いた印象はありません。

サビのきらきら降る雨のようなサウンドが印象的で、アルバム内で唯一と言っていいほど、やわらかいやさしさを感じさせる曲です。この曲を聴くと、なんとなくアイヌ神謡の「銀の滴降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに」というフレーズを思い出します。

この曲も、歌詞が大好きな曲。

羊の着ぐるみを着たまま 痩せた男の子がおどけて
吐く息を白くさせて 祈るように手を合わせた
あの子と空の間には 透明な何かがあるから
きっと願いは届かない 少し寒くなる遊園地

きらきらした音で突き放すような、透明で残酷な言葉がきれい

この曲に出てくる遊園地や観覧車の情景は、『Puppet Show』以降も、2001年「散リユク僕ラ」、2008年「リプレイ」へと引き継がれてゆきます。どちらも別れの情景として。

8.monophobia

2:23と、『Puppet Show』のみならずプラトゥリの全楽曲においても屈指の短さを誇ります。静かなのは最初だけ、0:49からは「これでもか」と高速のベースフレーズが続くパンク・チューンになります。

「ぬけがら」のような「透明感のあるABメロで爆発的なサビを対比する」という構成ではなく、最初の静かな部分から既に音作りが不穏です。冒頭からギターのメインフレーズとか細いノイズとが重ねられていて、窓をひっかかれる不快感に似た「なんだか嫌な感じ」がすごくする。途中で走り出してからは、止まることなく最後までシャウトのような歌唱と狂ったような演奏が続きます。

ほとんどライブでやってくれない曲ですが、2013年の秋ツアー「瞳孔乱反射」でめちゃくちゃ久しぶりに演奏されました。
ライブだとバカみたいにカッコイイ曲なので、もうちょっと頻繁にやって欲しいなあ。

9.クリーム
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

インディーズ時代のミニアルバム『Strange fruits - 奇妙な果実 -』に収録されている、同タイトル曲のリテイクです。
ライブ、特にオーラスの定番曲。初の武道館公演である「ゼロ」も、最後の曲は「クリーム」でした。クリーム〆のライブは多幸感に溢れていて大好き。

『Strange fruits』版よりも大幅にメジャー感のあるアレンジに変わっており、現在ライブで演奏されている「クリーム」は、この『Puppet Show』版に近い形です。イントロの印象的なギターフレーズは、この『Puppet Show』版で追加されています。

サビのギターのアンサンブルが気持ちよくて大好き。シンセかギターかわからない音作りは当時から健在。ギターギターうるさくて申し訳ないのですが、でも、ギターギター言いたくなるような曲!じわじわと熱が上がっていくようなソロも、ボーカルの裏で大暴れしている大サビも、めちゃくちゃ格好よくて大好きです。

歌詞はちっとも明るくないのですが(笑)なぜか聴くだけで幸せな気持ちになれる曲。

10.3月5日。
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

Plastic Tree屈指のヘヴィ・ナンバー。
サウンドの重心の低さもそうですが、とにかく歌詞が重い。陰鬱で自閉的、聴く人の感情を揺さぶって突き落とすような力を持っている曲。

テンポは決して速くありませんが、潰しまくったサウンドがザクザクと耳を突き刺してくる。音だけ聴くと、結構グランジ感があってカッコイイです。まあ、この曲は音だけ聴くのはちょっと難しいですけど……。

有村さんの誕生日は3月6日なのですが、その前日をタイトルに冠したこの曲のテーマは「遺書」。 “はじめまして。苦しくて僕は手紙を書きます。” から始まる歌詞は、『Puppet Show』収録の他曲と異なり、ひたすらに苦痛だけを歌います。
他の曲は疎外感や孤立感がテーマになっていたとしても、風景描写や希望的な表現が同時に見られます。しかし、この曲はひたすらに救いがない。
一字一字に込められた悲痛な感情を歌いきる表現力には脱帽です。

ライブで聴くと音と言葉に殴り殺されるような気持ちになりますが、だからこそセットリストに組み込まれるときは、絶対にライブに行きたいと思う。とても大切な曲。
直近で演奏されたのは、2014年春ツアーの「echo」。3月~4月にかけて行われたツアーで、3月公演のみ演奏されていました。成熟した彼らの技術と表現力で演奏される「3月5日。」は、ぞっとするほどにこわい、しかし美しい情景でした。

11.サーカス
  • 作曲:Tadashi
  • 作詞:Ryutaro

Plastic Treeを代表する名曲。
彼らがずっと掲げている「サーカス」というモチーフを象徴する、長尺のバラードです。このアルバムの最後を締めくくるに相応しい、奇妙で美しい楽曲。

「3月5日。」で精神的に突き落とされたところに、イントロのたゆたうようなギターが響き始めます。空中ブランコのロープのような。

ゆったりとしたテンポであまり派手さはない曲ですが、構成が非常に面白く、ちょっとした組曲のように展開を楽しむことができます。

ABメロは全体的に抑えめのアレンジ。ドラムはひたすらハイハットを叩いていたりと、ともすればうるさくなってしまいそうなのですが、きっちりと鳴りが抑制されています。ベースはごくシンプル、ギターもクリーントーンを重ねているだけ。
そこから徐々に熱が上がっていって、4:24で一気に解放される曲構成が本当に美しい。

どのパートもABメロ・1サビ・大サビと全く違うアプローチをしているので、じっくり聴けば聴くほど発見がある楽曲です。大好き。

ライブでは前半がよりスローなテンポになっていて、後半のカタルシスがすごいことになっています。2017年発売の39th シングル『念力』の通常盤にはライブアレンジver.の「サーカス」が収録されているので、ライブアレンジが気になる方は、ぜひ。

一方、歌詞は、絶望的でも希望的でもない、ぼんやりとした奇妙な情景を描きます。
決して明るい歌詞ではないのですが、しかし『Puppet Show』の収録曲では唯一、「ひとりきりではない情景」に向かって歌が進んでいく、開かれた楽曲だと言えます。

僕だけの方法で祈り始めたら
いつか窓の外は変わりだすかな?

寒くない冬が来れば僕の町にサーカスが来る
誰も居ない広場に ほら
ひとつずつ灯りがつきだして 君の声が聞こえた

他の楽曲を見てみると、以下のような感じ。

・みんな居なくて静かな昼下がり(MAY DAY)
・気づいたら君はもう消えた(絶望の丘)
・暗くなった野原に僕だけ独りにしないで。(幻燈機械)
・何もかも嘘になる 誰も居なくなる(本当の嘘)
・空が晴れてたからみんな居なくなった。(monophobia
・居場所なんかもう、要らない。(3月5日。)

こうして書き出してみると、『Puppet Show』収録曲には「僕」を受け入れて寄り添ってくれる他者が清々しいほどに皆無です。
でも、そんな「誰も居ない情景」に、「サーカス」でゆっくりと灯りがつき始める。

そして
僕だけの方法で祈り始めたら
いつか窓の外は変わりだすかな?

歌詞の主体が、希望を求めて能動的に何かを為しているのは、『Puppet Show』収録曲において「サーカス」だけです。
上昇してゆく熱に似たサウンドも相まって、灯りに手を伸ばすような後半の情景は涙が出るほど美しい。最後には失速して落下していくので、必ずしも希望が見出せる歌詞ではないと思いますが、ひかりの余韻を残して消えるような終わり方がとても好きです。

「幻燈機械」のところで「このアルバムはヘッセみたい」と述べましたが、「サーカス」の終わり方を含めて、個人的に『Puppet Show』は「デミアン」だと思っています。
大好き。

アルバムについて

後年メンバー自身によって明かされていますが、『Puppet Show』を録音した当時の環境はかなり悪かったようです。
せっかくメジャーに行ったにもかかわらず、事務所はツアーグッズの売り上げを持ち逃げして消滅。また、90年代後半というヴィジュアルシーンが盛り上がっていた時期なのに、うまくその波にも乗れなかった、と。

今思えば、その当時に露出過多となって消費し尽くされなかったからこそ、ここまで息の長い独特の立ち位置を確立したバンドになったのかな、という気がしますが……所詮は結果論ですし、やっぱり当時は苦しかったとのこと。「このアルバムを作って終わろう」くらいの気持ちで臨んだ、とも語られています。

レコーディングに関しても、初めてプロデューサーが入ったこともあり、特に中山さんは苦しい作業だったと振り返っています。この作品は合宿で録られたアルバムなのですが、楽しむ余裕もなかったと。この辺りは「忘却モノローグ」や「ROCK AND READ 017」で詳しく語られています。辛かったけれど西脇さんから学ぶことは多く、今も糧となっているとのこと。どちらも濃い内容なので、気になる人は読んでみてください

逆に言えば、そういった追い詰められた背景があったからこそ、ここまでヒリヒリした切実さのある、怪物的なアルバムが作成できたんじゃないかなあ。
結果的にこのアルバムはPlastic Treeの出世作となり、今に至るまで代表作と言われ続けています。

1stアルバム『Hide and Seek』には「アレンジやアートワークを納得いくまで作り込めなかった」という後悔があったらしく、その鬱憤を晴らすかのごとく、さまざまな要素が詰め込まれたアルバムとなりました。
Ryutaro監修のブックレットデザインは、実に初期プラっぽい暗黒童話感があって面白いです。

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こんな感じ。怒られたら消します。

個人的には「初めて聴くPlastic Treeのアルバム」としてはあんまりお勧めしませんが(やっぱり、そのときそのときの最新がいいと思う。あるいは普段聴いている音楽別に最適解が変わる感じかな)、気になったからもう一歩踏み込みたい、というときにはお勧めのアルバムです。暗めの文系オルタナとか好きな人なら1枚目でもいいかも。

なお、現在入手できるものは、初回盤ではなく2010年に発売された再発盤です。
プラは移籍の多いバンドで、レーベルを移るごとに既存CDが絶版になったりして、御多分に洩れずパペショも絶版状態が続いていたのですが……関係者の誰かが頑張って大人の事情をクリアしてくれたおかげで、現在は普通に買えるはず、です。
ちなみにプラにベスト盤がいっぱいあるのも、レーベルを移籍しまくったせいです。

その辺の話は下記事で。

nomuzikfighter.hatenablog.com

追記

ちょっと調べてみたんですが、2010年の再発盤も、もしかしてもうほとんど在庫がないのかしら……?
まあ、中古も以前みたいに高騰しているわけではないので、ディスクユニオンとかクロチャとかピュアサウンドとかで適正価格で入手できるんじゃないでしょうか。

どうでもよい話

このエントリのアイキャッチ画像はわたしの手持ちのパペショですが、世界中のパペショの中で最も保存状態が悪いのではないかという説があります。かなり汚れているので白黒加工したなんてことは、ない、よ……(._.)

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