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仕立て屋のサーカス - circo de sastre - |2017年東京公演「ある一夜の夢のようなはなし」@新宿ルミネゼロ

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2017/01/10 tue
仕立て屋のサーカス - circo de sastre -
「ある一夜の夢のようなはなし」
at 新宿ルミネゼロ
open 18:00 start 19:00
¥3,500

素晴らしい公演でした。
音と光と影で構成される、幻想的なインスタレーション
美しくもどこか不気味で、寂しいのに不思議とユーモアのある、「サーカス」という言葉に還元されるあらゆる要素が織り込まれた多層的な作品でした。

出会えてよかった。ぜひまた観たいです。

公演の感想

昨年のマームとジプシー「ロミオとジュリエット」を観劇したときにもらったチラシのタイトルと写真が気になって、なんの情報も仕入れないまま、ふらっと観に行きました。
音楽家と裁縫師と照明作家、そしてサーカスの空中ブランコ乗り出身の団長が率いる現代サーカス集団の、音楽と裁縫と照明を用いたパフォーマンス公演です。
メンバーのスズキタカユキさんが、マームとジプシーの「coccon」「タイムライン」の衣装を担当されていた関係で、チラシが折り込まれていたんですね。

「音と布と光のサーカス」と説明されていたので、公演を観る前は、それらを用いたインスタレーションなんだろうな、サーカスがモチーフなんだろうな、くらいの感覚でした。そんな感じのわりとライトな気分で観に行ったのですが、想像以上に密度の濃い作品で、しばらくこの感覚に浸っていそうです。気持ちの良い酩酊感。

ダンスでも演劇でも音楽ライブでもないと言えばそうなのですが、同時にそれら全ての要素を内包するこの作品が「要するに何なのか?」と問われれば、やはり「サーカス」としか答えようがないなあ、と思いました。

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新宿南口にあるルミネゼロは、初めて行く会場。
バスターミナルの上にありました。白が基調で、デザイン性の高い綺麗な会場。
イベントホールとして使う方が一般的なのかな?一応音楽ライブもできるようです。

会場に入ると、中央に巨大な布で作られた小屋があります。
サーカスのテントのような円錐形、そしてその周りに何本も何本も、天井からぶら下がった長く細い布が揺れています。なんとなく、アネット・メサジェ(布や刺繍などを用いた作品を創る、フランスの美術家です)思い浮かべました。

最初は布で覆われていて見えないテントの内部が、裁縫師が裁ちバサミで裁断してゆくことで徐々に見え始め、次第に演奏とパフォーマンスが繰り広げられてゆく。
音と光が揺らぐ薄暗い空間に、ジャキン・ジャキンと、鋏が布を断つ音が響いてゆく。
周囲を覆う幕が切り裂かれてゆき、その布は裁縫師の手によって、テントの内側で演奏し続ける楽団の躰へと巻きつけられてゆく。
拘束のようであり、繭のようであり、花嫁のドレスのようでもあるそれは、最終的には全て切り離されて、散り散りになったただの布切れになってゆく。

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明確なセリフがあるわけでも、派手で動的なパフォーマンスがあるわけでもないのに、その空間には確実に物語が内包されていました。濃密で、「どうとでも解釈できる」、自由な物語。
どうとでも解釈できる、ということは、その内部にあらゆる要素が組み込まれていて、かつそれらの関連性が明示されていないということ。混沌としていて、かつその混沌が許容されているということ。ともすれば散漫になりそうなくらい多義的と感じられる作品だったけれど、それらが全て、音と布と光でひとつにまとめられていて、ぞっとするくらい美しかった。

「サーカス」という言葉には強い思い入れを持っているけれど、その思い入れ全てを丸ごと受け止めて、かつ柔らかく投げ返してくれるような公演でした。抽象的なことしか言えないけれど、ほんと、もう、まじで、一回観てみてほしい。
綺麗だけどこわい、不気味だけどおかしい、楽しいけど寂しい、みんないるけど孤独、騒々しいけど静謐。そういった相反する感情を全てごちゃ混ぜにしても引き受けてくれるモチーフが、わたしにとっての「サーカス」で、そしてこの公演はまさにその情景そのものでした。

観られて本当によかった。

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そういう電波っぽいことを抜きにしても、多彩な楽器によって鳴らされる音や、その場で裁断されて加工されてゆく衣装と空間は、単純にパフォーマンスとして素晴らしかったです。完成度が高い。最初、ある程度シンセが走ってるんだろうと思っていたのですが、あれたぶん全部生演奏ですよね……。この楽器でこんな音が出るのか、という新鮮な驚きがありました。
舞台に設置された道具たちも美しく、あの空間だけでひとつの完成された作品だと感じられ、開演を待っている時間でさえ素晴らしかった。

また、動画・静止画ともに撮影自由、商業利用も可、そして18歳未満は入場無料と、公演に設定された条件から感じられるパフォーマー側の意志も美しいなと思いました。
移動しながら観てもいいし、食べ物を食べながら観てもいい(フロアでは美味しそうなパンやいちごなどが売り出されていました)という自由度の高さも、「サーカス」という空間を形成する一部。売られていたワインを買って飲みながら、ただただ明滅する光と情景を観ていました。

そうそう、ワインがおいしかったんですよ。正直こういった場面で出されるワインにはさほど期待していなかったので、いい意味で裏切られました。おいしかった。紙コップも舌触りを考慮して選んだんじゃないかなあ、薄っぺらく煩わしい紙の味もせずに感動しました。
あらゆる細部に世界が宿っているように感じられて、あの空間にいる間中、一瞬たりとも我に返って冷める瞬間がなかった。  f:id:haru1207:20170111014712j:plain

布はその場で切り裂かれてしまうし、音も鳴った瞬間から消えてゆく、ほんの一夜の儚い夢のような公演でしたが、死ぬまでずっと大切にするであろう、強く刺さる記憶になりました。
どんな見方もどんな解釈も面白がるような、不思議とユーモラスな懐の深さが感じられる情景。ぜひまた行きたいな。サーカスに思い入れのある人であれば行って損はないと思うので、ぜひ。めっちゃおすすめです。
来月には横浜公演があるので、行こうかどうしようか検討中です。D.A.N.の主催イベントと被っているので、悩ましいけど……。ソールドしそうとのことなので、早めに決めようと思います。*1

Twitterで見つけたこの方の映像が素晴らしかったので、記録として貼っておきます。
無邪気で不気味で寂しくて、優しく排他的な情景でした。

仕立て屋のサーカス

「物語のある音楽」をテーマに活動する「CINEMA dub MONKS」の曽我大穂ガンジー西垣、ファッションブランド「Suzuki Takayuki」のデザイナー・スズキタカユキ、照明家の渡辺敬之で構成される。2014年から活動開始。「音と布と光のサーカス」として、それらを用いたパフォーマンスを行う。

公式twitterhttps://twitter.com/circodesastre
公式facebookhttps://www.facebook.com/circodesastre/

インタビュー記事

*1:悩みに悩みましたが、横浜公演行ってきました。こちらも素晴らしかったです。

nomuzikfighter.hatenablog.com

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