NO MUSIC FIGHTER

音楽の話と音楽じゃない話をしようよ

sébuhiroko, 波多野裕文「Suu / Haku」@晴れたら空に豆まいて

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2017/9/25 mon
Suu / Haku
at 晴れたら空に豆まいて
open 18:30 start 19:30
¥3,400

Suu / Haku « 豆風ライブハウス 代官山「晴れたら空に豆まいて」

出演アーティスト

ライブの感想

昨年の「ひかりとまどろみ」と同じ、晴れ豆ブッキング担当の方による企画。
世武さんのことは存じ上げなかったのですが、晴れ豆企画だから素晴らしい方に決まっていると予習ゼロで現場に向かいました。
開演間際に滑り込んだので、席は後方でしたが、比較的ピアノはよく見えました。
ドリンクはチャイ、初めて頼んだ晴れ豆のチャイは甘さは適度でスパイス感もほんのり、優しい味わいのチャイでした。

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5分ほど待ってから、開演。

波多野裕文(People In The Box)

六月の神楽音以来なので、けっこう久しぶり。
全曲ギター一本での弾き語りでした。

波多野さん、途中ステージで「今日は緊張している、セットリストを決めてきたのに……」と仰っていましたが、客席から見ていても確かに緊張気味に見えました。でもそれは決して嫌な感じではなくて、ぽつぽつと一粒ずつ落とすようなギターの音色も拡がるような柔らかな声も、穏やかなのに少しピリッと締まった空気があって、気持ちのよい演奏でした。

彼の歌を聴いたのが久しぶりだったからか、細かいことはあまり考えずに、ただただ「この人の歌が好きだなあ」ということを思っていました。
ここ最近いろいろ考えこんでいたこともあり、ピープルの「月」が演奏されたとき、妙に感極まって泣いてしまいました。“やめよう ドライフラワーに水をあげるのは” “たとえ優しさに返答は無くても 胸をはれよ”もともと好きな曲ではあるのだけれど、いつにも増して沁みるようで。決して派手さのある曲ではありませんが、後半になるにつれて譜割の自由度が増して語りかける言葉のようになっていく感じ、演奏に沿っていた歌が解放されていくような感じがあって惹きこまれました。

People In The Boxの「月」は、今回の公演名ぴったりと沿う歌で。
おそらくブッキング担当の方が、それを意識なさって公演名を付けられたのだと思いますが……“きみが息を吸うときにぼくが吐くよ/ふたりは一対の呼吸” という冒頭の言葉、それだけでこの時間と空間に意味付けがなされたような、そんな感じがしました。

そうそう、途中で波多野さん、「世武さんはずっとCDを買っていて、ファンのようなもの……ファン……ファンです」と言い切っていて笑いました。笑
波多野さん、制作者として素晴らしい人だなあと思っていることは前提として、それと同じくらい、リスナーとしてほんとただの音楽オタクだよなと思うことが多々あって(笑)他アーティストに対する敬意をまっすぐに示されるところもすごく好きだなと思いました。

sébuhiroko

正式な表記は漢字じゃなくてこちらで合っているのかな?
冒頭に書いた通り知らないまま足を運んだのですが、本当に最初から最後までずっと素晴らしくて一人で楽しくなってしまいました。超最高!
ピアノによる弾き語り。先攻の波多野さんと対照的に、その場で曲が決められて次々と演奏されて、一連の楽曲と演奏とがまるでひとつの生き物みたいだった。

ピアノという楽器が特別に好きなせいもあって、ピアニストの好き嫌いがかなり激しい方なのですが、彼女はドンピシャで好みのピアニストでした。その上シンガーとしても超好みで、もう脳内に雷が落ちたかのよう。
力強く躊躇いのない、凛々しいピアノの音といったら!一音一音の際立ったドライで説得力のある鍵盤の音、独特のコード感も美しく、引き込まれました。なんていえばいいんだろう、瞬発力の高い演奏だなって。音の選択に対して確信的で、それは決まりきったことをやっているという意味ではなくて、空間における鳴りから瞬時に次を選択する、……いや選択するっていう感じでもないかな?ほんとうまく言えないんだけど……演奏と空間を完全にドライブしきっている感じ。かっこよかった。
声もハスキーで、少しザラザラした質感の鍵盤の音と吸いつくみたいにぴったりだった。

あとはこれはプロの方に対して言うのは失礼かもしれないけれど、手首や指先の動きが美しく、正当な訓練をきちんと積んだ方だなと思いました。下手な鍵盤屋って指が弱くて、所作が美しくないんですよ。ピアノとの一体性がないというか。でも彼女は、指が動くだけで音が鳴りそうだった。いや、実際鳴ってたんだけど(笑)仮にピアノ無しで空中で指を動かしたとしても鳴る音が想像できるよって、それくらい美しかったです。

ビートルズや銀杏ボーイズのカバーも演奏されていましたが、基本的にはご自分の楽曲がメイン、だと思います。
帰りに流れるようにCDを買いました。最新アルバム『L/GB』、さっそく取り込んで延々とリピートしています。録音だと生の迫力や躍動感は少し控えめ、その代わりピアノとピアノ以外の音や声との調和、トータリティが追及されているような、端正な印象を受けました。素敵な作品。これから先何度も何度も繰り返し聴き続けると思う。
帰宅してから公式サイトを覗いてみたのですが、そこに「ドーター、デペシュモード*1などと比較されることが多い」と書かれていて、「あー!わかる!」となりました。並べて語りたい気持ちわかる。そして映画音楽等で大きなお仕事をたくさんなさっている方だと知り、びっくりしつつも納得しました。すごかったもん。

ドラマティックで迫力のある彼女の演奏が、やわらかく語るような波多野さんの演奏と好対照で、公演名の「Suu / Haku」は本当にぴったりの名前だったんだなあと思いました。衝き動かして揺さぶる音と、寄り添って問う音と。ブッキング担当の方マジGJ & 超ありがとうございます、という感じ。

最後、アンコールでお二人が出てきて、世武さんの楽曲「Too Far」を演奏してくれました。

再生して聴いてくださいとしか言えないのですが……本当に素晴らしかったです。
声質や歌い方も好対照なんですね。全然違うのにうっとりするほど美しく融けあう歌と歌、聴き入ってしまいました。まさしく一対の呼吸のようだった。

そんな感じで全編通して演奏が素晴らしかったのですが、MCではお互いに「はたまる」「せぶまる」という謎のあだ名をつけて呼び合っていて可愛らしかったです。笑
実はそんなに親しくないんだけど、と仰っていましたが、この共演がきっかけで一緒のお仕事や作品での関わりが増えたら嬉しいなあと思ったし、きっとそうなるだろうと思えました。
お二人が「有意義な夜」「嘘のないステージ」と仰っていたことが記憶に残っています。客席にとっても、まさしくその言葉がふさわしい夜でした。

 

はたまる(波多野裕文)とゴマツロモでシメた。Too Far2人でやったけど最高すぎたので、動画あげれそうだったらこちらであげます。 はたまるの声とギター、マジで聴いて。しかも出来たらライヴでね! 私はというと、もうほんとにピアノが大好きすぎるしアレは自分の身体なのだが、とうとうピアノ大好きって声に出てしまってたらしく、マイクに呟きが乗ってた模様😂 しかしほんとに、リハから本番まででもピアノがどんどん自分に合ってくるというか、同じピアノと思えないくらいタッチも音も変化してったので(リハから見てると多分面白い)、本番全曲コードも構成も変わってましたが、それが弾き語りの醍醐味ですね。セットリストもないしね。 The Beatlesの今宵オリジナルコードに関しては、そんなアレンジもあるかしら、と温かい心で許してください🙏🏻なんかああいう感じになってん、自然に。 全てが生き物ってことで!笑 #来てくれたひとありがと #楽しかったぜ

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ライブ後に更新された世武さんのインスタの写真がとっても可愛かった!
客席にいたらしいノベンバのケンゴ氏がナチュラルに写っていて笑いました。

世武さんがライブ中に呟かれた「ピアノ大好き」という言葉、体中から湧き上がったものが思わず零れたという感じで、とても印象的でした。楽器を愛しているプレイヤーが大好きなので、もう色んな側面において世武さん最高だなって、たった一夜で惚れ切ってしまった。いろいろ調べてみたら四月には向井氏とセッションしたりしていたらしくて、「なんでわたし今まで知らなかったの!」となっています……ので、今後のは行けるだけ行こう。とりあえず11月にFEVERがあるらしいので行きます。

気分がよかったので、終演後はAFURI*2でラーメンをキメてから帰りました。

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22:00のラーメンだけど、こんにゃく麺じゃなくて普通麺だし、鶏チャーシューじゃなくて炙りチャーシューだし、淡麗じゃなくてまろ味だ!
罪深いですがおいしかったです。

*1:他にもビョークニューオーダーとレジーナ・スペクターの名前が挙げられていました。そっちはそこまでピンとこなかった。他の作品を聴いたらわかるのかな。

*2:恵比寿等にあるおしゃれラーメン屋。ちょい高いですがあっさりしていておいしい。わたしは柚子塩がすきです。今回は選びませんでしたが、+200円で麺をこんにゃく麺に変更できるので、ライブ帰りの夜中でも罪悪感少な目でラーメンを食べられる幸せなお店です。