NO MUSIC FIGHTER

音楽の話と音楽じゃない話をしようよ

clammbon|「モメントツアー2017」@TSUTAYA O-EAST

楽曲と演奏の強度を思い知らされた2時間。新譜も超いい。ライブ行ったのに帰宅後またニコ生タイムシフトで見返してしまった。楽しかったです。

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2017/6/27(火)
クラムボン
モメントツアー2017
at TSUTAYA O-EAST
open 18:00 start 19:00
¥2,500(!!!)

セットリスト

  1. Slight Slight
  2. Re-ある鼓動
  3. パンと蜜をめしあがれ
  4. 蒼海
  5. flee
  6. nein nein
  7. Re-雨
  8. ララバイ サラバイ
  9. バイタルサイン
  10. KANADE dance
  11. yet
  12. シカゴ
  13. レーゾンデートル
  14. Folklore
EN
  1. 波よせて
  2. タイムライン

18:15くらい会場着。ソールド公演なんだけど、オープンが早いからか会場周りに人はあんまりいない。中に入ってもまだ2割も入ってないくらいだったかな?
物販で新譜が売られていたので購入して、中に入る。下手前方が空いていたので滑り込みました。彼らを近くで観るのは初めて。原田さんがあんまり見えないのが残念だけど、ミトさんと伊藤さんはめっちゃよく見える。

ほぼ定時開演。「Slight Slight」でしっとりと開幕。

視界が良好だったのでかぶりつきでステージに見入ってしまって、正直あんまり記憶がありません。とにかく全体的に素晴らしかったので「素晴らしかったです」が素直な感想なのですが笑、それだけだとあんまりなので特に印象に残ったところを書き留めておきます。

「蒼海」「flee」「nein nein」。
立て続けに演奏された新曲3曲、これらがめちゃくちゃよかった。開演前に新譜は購入していたのですが、あまりにも素晴らしかったのでMCにのせられて*1帰りがけにもう1枚買いそうになりました。笑
先日の野音で先行披露されていた「レーゾンデートル」と「タイムライン」はパッと聴いた瞬間から口ずさめるくらいキャッチーでバランスのいい楽曲でしたが、この3曲はそれぞれ個性が一定方向に振れきっていて、尖りまくってて超よかった。わたしはクラムボンのオリジナルアルバムだと『id』や『imagination』が大好きなのですが、ああいう新しいものを模索する感じというか実験的な印象もありつつ、単に新しいとか面白いとかだけじゃなくって単純に「ああいい曲だね」ってスッと沁み込んでくる親しさもあって、まだ聴いていなかった新譜をこの時点で大好きになってしまった。ちなみに一番好きなのは「nein nein」。自宅に帰ってから聴いた録音もすごくよかったけど、この日の演奏めっちゃ興奮した!リズムの掛け合いがめちゃくちゃ面白いし、完全に楽曲に入り込んで好き放題してるミトさんも、そんなミトさんを射殺さんばかりの鋭い視線(笑)で見つめながら完璧なタイミングでリズムを刻み続ける伊藤さんも超かっこよかったです。ためる感じのリズムが楽曲全体にフワッとした連続する曲線みたいなグルーヴを作っているんだけど、個別の音を聴いているとめっちゃノイジーだったりエッジがきいていたりして全体像と細部が両極端で面白い。毎回やってくれって思うくらい好き。

「Re-雨」「Folklore」。
6月だから季節的に聴けるかなと期待していた2曲だったので、やってくれてとても嬉しかった。どちらも大好きな曲だし、プレイも最高でした。「雨」はライブハウスが一瞬で清涼な山になるね。

「波よせて」。
これは人によって違うと思いますが、わたしはライブに対して一体感を求めることがほとんどないし、お決まりのシンガロングとかくそくらえだと思っているのですが、「波よせて」とか「Folklore」で歌うのはめっちゃ好きなんですよね……。なんでだろうなあ。
「お決まりの場所でみんなで歌う」という行為がなんで嫌いなのかというと、内輪の馴れ合い感というか、初見殺しというか、「音楽を聴くこと」以上に「コミュニティに所属すること」を強要されている感じがして嫌いなんですけど、そういう感じがあんまりしないからかな。「波よせて」も「Folklore」も歌う部分は歌詞もメロディもすごく簡単だし、初めて聴く人でもいきなり歌えるし、歌わなくても楽しめるし。そういうとこが好き、なのかな。あとは単純に緩やかでダイナミックなグルーヴが気持ちよくてすき、そこに声をのせることが気持ちよくてすき。

「バイタルサイン」。
あとで書きますが演奏が超よかった。超よかったんですが、スタッフさんの奮闘を初めて目撃したことにより後半はずっと笑っていました笑
この曲の終盤、ミトさんがベースぶんまわしてベースアンプを殴りまくるんですが、その直前に下手袖にいたスタッフさんがサッと出てきてスタンドを引っ込めたりアンプに置いてあったドリンクを引っ込めたりアンプの位置を調整したり、いざミトさんがぶん殴り始めたら後ろからアンプをグッと支えたりと八面六臂の大活躍をしていらっしゃいました。スタッフさんの尽力あってライブは作られているんですね……。笑っちゃうって。

「KANADE Dance」「シカゴ」。
「バイタルサイン」と併せて、楽曲の強度を強く感じた演奏でした。素晴らしかった。
どの曲もライブの定番、スタンダードと呼んでいい曲ですが、スタンダードとなる曲にはなるだけの力があるんだなと。で、その強度は楽曲の骨格自体にも備わっているけれど、演奏を重ねて年月を経ることによって進化していくものでもあるんだろうな、と。まだちゃんと言葉にできない感覚なのですが、生き延びても古びないこととか、100年後も新曲として聴き得る楽曲が持つ要素とはなにかとか、そういうことを考えながら聴いていました。この日の「シカゴ」はめちゃくちゃかっこよかった……なんだあのイントロ。最高か。

他に印象に残っているのは、音響と演奏全般のことかな。

ド下手スピーカー真ん前にいたので、ある程度音がキツくて耳をやられるだろうなって覚悟をしていたのですが……全然そんなことなくって。バランスのいい音で、確かに音量は大きいんだけど耳が痛くなることはなくて、片っぽのスピーカーの真ん前真下にいるのに、ちゃんと全部のレンジきれいに聴こえて。彼らのライブが心底楽しい理由のひとつとして、音響の良さは絶対にあるよね。帰宅して聴いたニコ生の音も、ニコ生でこんな音出せるの?!てびっくりするくらいよかった。プロのお仕事。

あとは演奏のこと。いつも思うことではあるけれど、クラムボンの3人ってプレイヤーとしてそれぞれ優れていて、そこがとてもすきだと改めて思いました。
音楽的な素晴らしさと演奏の技量って必ずしも一致するものではないけれど、必ずしも一致するものではないからといって技術を軽視する風潮とか感性がすごく苦手で。演奏に対して楽曲が要請する技量というものは必ず存在するので、そこを軽んじず真摯に向き合っていると感じられるところがだいすきだし信頼できるんだなあ、と改めて実感しました。あとは、楽曲の制作と録音とライブでの演奏、その全てがひとつの円としてきれいに循環しているからこその噛み合い方なのかな、とも。さっき書いた「楽曲の強度」ともつながることですが、彼らの曲って異常に難しいものもあるけれどそうでないものも多々あって、でもその「スタンダードにただプレイするだけなら難しくはない曲」が、年月を経て何度も何度も演奏されて育っていくにつれて、プレイヤーの技量に合わせて難易度が跳ね上がっていく様もめちゃくちゃおもしろいなって思う。いま頭の中で再生しているのは「シカゴ」なんだけど。楽曲の骨格自体は変わっていないのに、そのパワーは年々増していると思うし、これからもそうなんだと思う。楽曲がプレイヤー自身や観客に馴染んだこととかアレンジの変遷による内包する表情の多様化とかいろんな要因があると思うんだけど、技量……というか精度かな、の向上に伴って楽曲自体が強化される面もあると思う。

うん、いや、単純にすごく気持ちよかったんですよね。演奏する姿が指先から足まで全部ばっちり見えて楽しかったし、その姿が美しいなって思ったし、そしてなにより単純に演奏も音響も含めた音がすごくよかった。余計なことを考えないで、全身で楽しめる気持ちいいライブでした。

あ、そうそう、どの曲だったか忘れたけど、イントロでフロアから立て続けにプシュッてプルトップを開ける音が響いた瞬間があって。そのときの空気感と音の混ざり方がすごくいいなーと思いました。去年のtoddleかな?そのあたりからずっと、意図的に鳴らされる音と意図しないその場の音とが混ざり合うことについてぼんやりと考えていて。バーカウンターの氷の音とかこのときみたいにプルトップを開ける音、遅れてきた人がドアを開く音とか、その現場で自然に鳴る音が混ざる感じ。ビルエヴァンスの名盤『Waltz for Debby』には、よーく耳を澄ますと地下鉄の音が入ってるんだけど、それが入っていることがなんかいいなって思う理由とか。これはもうちょっとまとまるようになったらどこかに書きます。とにかくこの日は、演奏も空気もとてもよい日でした。

*1:ライブ中ミトさんは新譜をグイグイ推しまくっていて、友人に配る用とか保管用に追加で買ってもいいよとガンガン宣伝していました。この人のMC、基本的な発想や喋り方がガチオタで毎回笑います笑 もちろんいい意味で!わたしはオタク気質のアーティストがすきです。ものづくりは凝ってなんぼだよね。